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氷炎組曲
【ファンタジー 官能小説】

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錬金術師と可愛すぎる妻と洋ナシのワイン浸け-1

(これはまた、大変おいしい状況なのでしょうが…)
 胸のうちで呟き、ヘルマンは苦笑する。
 彼は自宅の居間で、ソファーに座っていた。
 隣りには妻のサーフィが腰掛けて…というより、膝に乗るほどくっ付いて、クスクス笑いながらしなだれかかっている。
 ソファー自体は、三人は楽にかけれる広さなので、この状況は断じて家具のせいではなかった。
 白銀の髪に縁取られた、可愛らしい少女妻の頬は紅潮し、瞳はとろんと蕩けきっていた。
「ヘルマンさぁ〜ま」
 アルコール混じりの吐息と共に、ろれつの怪しい声で、幸せそうにヘルマンを呼ぶ。
 つまり、サーフィはすっかり酔っ払っているのだ。
 
 結婚して半年。
 妻になったのだから、“さま”は止めてくれと言ったのも、頭からぶっとんでしまっているらしい。
「洋なしのワイン漬け一つで…。君がアルコールにこれほど弱いとは、知りませんでした」
「うふふ〜、らぁってぇ、お酒飲んだのなんか〜初めてです〜」
 錬金術ギルドのお得意さんが、今年は特に豊作だったと、瓶いっぱいにくれたものだった。
 サーフィが砂糖と赤ワインで味付けされたそれを、一つ食べたとたんに、これである。
 妻の様子に驚き、ヘルマンも味見してみたが、アルコール度はおよそ二十%たらず、ごく普通のものだった。
 ちなみにフロッケンベルクで一般的に飲まれる酒は、さすが北国、平均アルコール度七十%だ。

――結論。普通以下だったのは、サーフィのアルコール耐性だけ。

「あれくらい、飲んだ内に入りませんよ」
 サーフィが首に手を回して抱きついているので、柔らかい大きな胸がヘルマンに押しつけられている。
 しかも酒で火照った身体が暑いらしく、ボタンをいくつか外しているので、深い谷間が晒されている。
(どうしましょうかねぇ…)
 サーフィを押し倒し思う存分貪る…という誘惑に耳を貸すか、思案のしどころである。
 相手は相思相愛の妻なのだから、抱いても何も問題ない。
 しかも、普段は奥手過ぎる程慎ましやかな彼女が、こんなにしどけなく迫るなど、まさに千載一遇のチャンス!
 ……とは思うものの、酔っている彼女へ漬け込む事に、後めたさも感じる。
 北国の王家に生まれ、陰謀の波にもまれ、紆余曲折を経て、不死の魔人になって100年以上。
 相手が酔っていようが弱っていようが、利用できるものはトコトン利用しつくすのが、当たり前だったのに……

 サーフィに関する限り、へルマンは馬鹿馬鹿しいほど臆病で優柔不断になってしまう。
 それもこれも、結局は彼女を愛しすぎているせいだ。



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