−風の凪ぐ町−-3
「俺、行くよ…」
「うん…」
どうしたらいい…
僕らはもう、終わっているはず…なのに、忘れてしまった。止まる事を。終わる事を…こんな、重要な事を…動いている。
右手を握り締めると、やっぱり感覚はある。
ベンチを立ってあたりを見回している。
行かせていいのか?
残ったからどうなる?
どうしたらいい…
「まてよ…」
うつむいていた。また膝の上で手を組んでいる。
「…何?止めたって俺、行くよ」
「…俺も行く」
ブランコがまだ揺れる。ギィッと鳴らして揺れる。
「…そっか。時間無いし、すぐ出よう」
僕は…どうする。
「なぁ、お前も行こうや」
僕は…どうする。
沈黙が嫌だ。
無機質な音が嫌だ。
「…行く」
「えっ…ま、まって。僕だけ残っちゃうよ」
夕焼けが終わった。町を出るには遅いかもしれない。
でも、ナンバーは隠しやすい。
「お前、家戻るんだろ?」
「えっ…」
頭の中で道を探す。どこならこの町を抜け出せる?
どこを選ぶ?
みんな、どこを考えている?
「僕らと行こうよ…」
町を出よう。
「…連れてくのか?」
もう、町は終わった。終止符は降りて来たんだ。自分たちだってもう生きる必要は…
本当は無い。
無い。