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−風の凪ぐ町−
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−風の凪ぐ町−-2

「バカ言え!!…そんな事したら俺らは置いて行かれちまうぞ!!」

他の町…僕たちは言いつけを守り、闇の時間になったら他の町には近づかない。
それは、ルール。
それが、長い間守られてきたルール。

「で、でも…僕たちどうなっちゃうの?」

生きてしまった…僕たちは、もう止まれないのだろうか…

「どうもなにも…」

どうもなにも…どうなるのだろう。

町を出てどうなる?ここに残ってどうなる?

残ったら…止まれるか?

いや。自分で止まらなかったら意味はないんだ。
体に張り付いたナンバーが僕らを閉じ込めている。

「俺…やっぱり町でてみる…」

静かだった。いつもなら公園で遊ぶ小さな子供の声がするはず。
こんな壊れかけた公園だって、声は響いていたはず。

「…好きにしろよ。俺は、行かねえぞ…」

「ぼ、僕…」

「一緒にいくか?…」

ブランコがまだ揺れる。ギィッと金具がきしむ。

「いかなぃ…ウチ、帰ってみる…」

気にした事なんて無かった。ブランコは音がするんだ。

ギィッ…

「そんなの…何になるんだよ!!お前、わかってんのか!!」

沈黙が嫌だ。余りに町が静かすぎる。
怒鳴り声にほっとする自分を見つけた。

人の気配は何かの音なんだ。そんな事に気がつく。

「だって…」

小さな声も嫌だ。自分たちまで小さくなってしまいそう。

「くそっ!!なんて事しちまったんだ…わかるか?俺たちだけなんだよ!!」

夕焼けが群青に染まる。夜が来るんだ。なのに、僕らは…止まれない。


ギィッ…

「俺たちだけなんだよ…」

小さくなっていく声は、群青の空に吸い込まれていく。
また、ギィッと音がする。

「お前、どおする?」

僕は…どうしたらいい…どうしたらいいんだろう。

答えが届かない。町を出るには…しっかりと夜が来る前が良い。時間が無い。
だけど、ナンバーを上手く隠さなきゃならない。
いっそ、剥ぎ取ってしまいたい。できるならば。できっこないのに。


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