第8話 シャボン玉の詩(うた)-1
陽一に伝わったのは、玲子の揃えた二本の指の感触だった。
二人の唇の間に割り込ませて、陽一の方を指先で抑えていた。
「どうしたんですか?。ここまで来て・・・・・・」
陽一は顔を上げると、怪訝そうに尋ねた。
陽一のみなぎりは、まるでお預けをくらった犬のように、よだれだけ垂らしていた。
「何だか、しらけちゃったの・・・・ごめんなさい」
玲子は、横を向いたまま視線を合わせずに話していた。
その態度が横柄に見えた陽一は、苛立ちを募らせていた。
それでも、横を向いた玲子の首筋が悩ましく、その苛立ちを紛らわせていた。
「しらけたって・・・さっきまで、悦んでたじゃないですか?。急に、どうしてですか?」
「あら?・・・悦んでたかしら?。あれは、ただの戯れ・・・戯れだから本気にしないで・・・・・・ふふ」
「嘘付けっ!・・・あんなに気持ち良さそうな顔しやがって!」
初めて目にする、挑発的な態度の玲子に、陽一も声を張り上げて怒りを露わにした。
「あら?・・・怒っちゃった?・・・・ごめんなさい。でもね・・・何も知らないあなたに、私が本気かどうか、区別が出来るの?。私がもっと本気出したら凄いのよ・・・・・・ふふ」
「てめえ!・・・馬鹿にしやがって・・・・・・。ベッドの上じゃどうか知れねえけど・・・俺が男だって事、忘れんなよ!」
玲子が、『あなた』呼ばわりをした事に対して、陽一は『てめえ』で返した。
もう、戻る事の出来ない二人の距離をあらわす、悲しい言葉だった。
さらに、『初めて』を嘲笑したような玲子の言葉に、陽一の怒りを募らせた。
「あら・・・力尽くで来る気?・・・ふふ・・・調子に乗んじゃないわよ!・・・。あんたにね!・・・私を本気で抱けると思ってるの!?・・・さあ!・・・抱けるもんなら抱いてみなさいよ!」
「ちきしょう・・・ババアの癖に・・・生意気なんだよ!。ケッ!・・・後悔すんじゃね〜ぞ!」
啖呵に挑発された陽一は、玲子の両手首を掴んで馬乗りになった。
「おら?・・・どうすんだよ?・・・へへ・・・・・もう逃げられんぞ」
玲子は、勢いで陽一を挑発したはいいものの所詮は女、力尽くではかなわず、横を向いて目を瞑りながら耐えるしかなかった。
「おら!・・・良いから、もったい付けないでヤラせろよ?・・・ふふ・・・本当は欲しいんだろ?」
陽一は、口づけを交わそうとするが、玲子は歯を食い縛って拒絶した。
仕方なく思った陽一は、拒むかのように横を向く、玲子の首筋に舌を立てた。
・・・・・・ピチャ・・・ピチャ・・・ピチャ・・・・・・
「頼むからよ・・・はあ・・・はあ・・・ちょっとだけで良いんだよ・・・はあ・・・はあ・・・すぐ終わらせるからさ〜・・・はあ・・・はあ・・・・・・・」
陽一は我慢できずに、馬乗りなる玲子の下腹部に、何度も自分のみなぎりを押しつけて悦んでいた。
何人もの客を招き入れた黒いチャイナドレスは、そのみなぎりのよだれによって汚されていた。
それでも、身動きの取れない玲子は、事の成り行きを見守りながら、じっと堪えるしかなかった
「はあ・・・はあ・・・何だよ、めんどくせ〜な。だったらよ・・・口でも良いんだよ。もう我慢できねえんだ・・・はあ・・・はあ・・・・・・」
陽一は、行為を止めると、自分でみなぎりを擦りながら、両膝で玲子の肩を抑えなが口元に近づけた。
しかし、陽一のみなぎりが、玲子の唇に触れた瞬間だった
ペッ!・・・・・・
玲子は、勢いよく唾を掛けた。
「ふふ・・・本性現わしたようね。そんな汚い物・・・私の顔に近づけないでよ!。」
「このクソババア!・・・何しやがんだよ!」
「そんな役立たず!・・・私の唾で上等よ!。さあ・・・いつもみたいに、自分で慰めなさいよ!」
「ちくしょう・・・さっきから調子に乗りやがって・・・殺すぞ!コラッ!」
この挑発は、陽一の怒りに拍車を掛けて、非情な仕打ちで返って来た。
ドッ!・・・・・・
陽一は、玲子の髪を掴むと、上半身を起こして頭をベッドに叩きつけていた。
その弾みで、玲子の頭は勢いよく跳ね返った。