廃墟タイム-3
二人はホールに戻った。
「あっちにサンルームがあるみたいだ」
マユミもケンジが指さした方に目を向けた。
レストランのメインホールと思しきその広い空間の先に、眩しい光が溢れた部屋があった。それはケンジが言ったとおり部屋と言うより、壁も天井も透明なガラス板で覆われたサンルームのようだった。
「マ、マユ、あそこで……」
ケンジはそわそわしたようにマユミの手を取った。
「うふふ、ケン兄、我慢できなくなっちゃった?」
思いの外広い空間だった。薄汚れた丸いテーブルが二つ倒れたままになっている。からからに干からびた観葉植物の鉢が3つ、床に転がっている。そしてすべすべした肌合いの柱が二本立っていた。
「おしゃれだね、」マユミはその太い円柱を見上げた。「上の方がなんか素敵。彫刻が施されてる」
「ギリシャ風の柱ってとこかな」
そのサンルームの外にも雑木や雑草がびっしりと生い茂っていたが、所々に赤いバラの花が見えた。
「しかし暑いな、さすがに……」
そこは太陽の光が充満し、いわゆる温室のような状態だった。むっとするほどの熱気が二人を包み込んでいた。
「丈夫なガラスだね。雨で汚れてるけど、どこも割れてないよ」マユミは首をぐるっと回しながら言った。そしてケンジの顔が上気しているのに気づいた彼女は、彼の背後に立った。
ケン兄、と甘えるような声で言って、マユミは腕を回し、ケンジの制服の白いシャツのボタンを外し始めた。「暑いから脱いじゃお」
「あ、マ、マユ……」
マユミはケンジの制服の半袖シャツをそっと腕から抜いて、その汗ばんだ胸に手を当て、静かにさすった。
「イかせてあげるね、ケン兄」
「う、うん」ケンジは小さな声で言った。
「やった! ケン兄が発射するところ、また見られる」
「え?」
「夏のボートでさ、ケン兄が勢いよく発射するの見て、あたし感動したんだよ」
「お、お前、そんなことに感動するのか?」
「男の子の身体の神秘」マユミは笑った。「だから、ここでまたイって見せて」
ケンジはマユミの顔を見ながら躊躇いがちに言った。「じゃ、じゃあ、一つリクエストしていいか?」
「リクエスト?」
「うん。この柱に俺をくくりつけて、それから、」
マユミは思わず口を押さえた。「えー? ケン兄、そんなMだったの?」
「い、いやさ、手や脚が動かせないようになってると、ちょっと興奮しちゃったりするんだよ」
「そうなの?」
「うん。マ、マユにして欲しかった……」ケンジは赤くなった。
マユミは口角を上げてケンジを横目で見た。「もしかして、その電気のコードで?」
ケンジは照れくさそうに頭を掻いた。
「じゃあ、あたしも調子に乗っていい?」
「なんだ?」
「ケン兄を目隠ししちゃってもいい?」
「え? 目隠し?」
「そう」
「なんでそんなこと……」
「どうせなら、あたしに虐められるシチュエーションを盛り上げたいかな、って」
「い、いいけど……」