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卒業。
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卒業。-3

 梅の花がまだ咲いている、校庭の椅子に腰かけた。梅独特の香りが鼻を擽る。

『…なに?瑞貴』
 座るように隣をぽんぽんと叩きながら、尋ねた。
 戸惑うように座りながら瑞貴は私を見る。どきどきとした緊張が伝わり、私もどきどきしてしまう。
『瑞貴…?』
黙ってしまった瑞貴を下から覗き込むようにみた。
『あっ、あのっ!!』
急に顔を上げ、真剣な表情で私を見つめる。そんな瑞貴の様子に驚きつつも、私は姿勢を正した。
『唯先輩、私…私…、唯先輩と同じところを受けたいと思っています』
 真っ赤になって話す瑞貴を、唖然と私は見る。だって、私の行く学校は、とても遠い。いくら寮が在っても、親は心配してしまう程だ。そんな所を、瑞貴の両親は赦すだろうか。
『瑞貴、…親にそれを言った?』
『いえっ。…でも、絶対行きます!その時は…私を……、』
『いいよ』
その先の言葉が何かは知っている。私の行く学校はそういう所だから。
『その代わり、絶対受かってね。…約束』
す、と小指を突き出す。
『…はい』
嬉しそうに、瑞貴が微笑む。小指を絡ませながら、固く約束をした。

ーそういう事か。

 走り去っていく影を見ながら、私は納得した。ずっと出なかった答えがやっと出た。

ー瑞貴は、私の妹。血は繋がっていないけれど、ちゃんと心は繋がっている。きっと、これが答え。瑞貴と出会うために私は此処に居たのだ。

 暖かな日差しが射し込む校庭を、ゆっくりと眺める。

『卒業。』

悲しいだけ、虚しいだけ…そう思っていた朝が嘘みたいに晴れ晴れとしている。


 卒業して、分かった。大切な人もでき、悲しいだけが卒業じゃない。虚しいだけが卒業じゃない。そう、思う。

 春から、私は一人になる。けれど、大丈夫。私は一人だけど、独りではない。瑞貴が居るから。きっと来てくれる。そう…信じてる。大切な妹を。

 ーendー


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