投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

卒業。
【その他 その他小説】

卒業。の最初へ 卒業。 1 卒業。 3 卒業。の最後へ

卒業。-2

 証書を受け取る、全ての生徒に声を掛けているのだろうか。
 私は椅子に座りながら、校長先生を見た。一人一人に笑顔を送っている、その姿に少し涙が出てきそうになった。

『ねえ、ねえ』
つんつんと、隣に座っていた友達が私の腕をつついてきた。勿論、バレないように、こっそりと。小声で。
『何?』
瞳だけ動かして友達わ見る。
『瑞貴(みずき)ちゃん、泣いてたね』
 瑞貴ー私の大切な後輩。瑞貴の名前を言われ、顔をしかめる。
『見てたの?瑞貴の事』
『偶然ね。…あーんなに顔真っ赤にして。愛されてるねぇ』
にこにこと笑顔で話す、彼女も大事な後輩が居た筈なのだが…。私がそう言うと、
『同じ高校受験するって言ってくれたの』
本当に嬉しそうに話してくる。
ー同じ高校…。キリッと胸が痛む。母親の母校である県外の私立を受けるのは、小さい頃からの約束だった。本当ならば、中学からそこに行く予定だったのだが、色々あって受験ができなかった。仕方なくこの中学校に通ったのだが、此処で瑞貴や、彼女と出会った。その分、やはり別れは悲しい。
 だから、ダメージの少ない内から通おうと思っていたのに。何の為に私は瑞貴と逢ったのだろうか。

『卒業生、起立』
先生の声で、慌てて立ち上がった。
『答辞。三年――――。』
生徒会長だった少年が前に出る。流石は男子。女子の列からはすすり泣きが響いているというのに、平然としていた。
『答辞、三年……――――。』
少し、つっかかりながらも読み始める。
 それを遠くに聞きながら、私は考えた。…私と瑞貴が出会った理由を。
 しかし、答えは出ない。いや…それが答えなのかも知れない。答えが出ないことが、答え。
『在校生、起立』
 いつの間にか答辞が終わっていた。ーそんなに考え込んでいたのだろうか。
 後輩達の歌が始まった。瑞貴も、うつ向きながら歌っている。柔らかな質の、肩で切り揃えた髪が瑞貴の顔の輪郭を隠す。

ー頑張って…!

 つい、心の中で応援してしまった。瑞貴が、僅かに顔を上げる。そして、私を見た。瑞貴の瞳を見ながら、私は優しく微笑む。
 本当なら、私が泣く側なのにね。これじゃ、逆だよ。

『卒業生、退場』
 先生達が担当の組の前に来た。これで、本当に終わり。もう、この体育館には二度と来ないだろう。寂しさが、込み上げてくる。切ない程、悲しい。


『唯、行くわよ』
 先生の話も終わり、私は母の車に乗り帰ろうとした。まだ、荷造りも終わっていないから。
『唯先輩、…良いですか?』
走ってきたのだろう、髪がぐちゃぐちゃで真っ赤な顔をした瑞貴が話しかけてきた。
 私は、母に先に行くよう促す。


卒業。の最初へ 卒業。 1 卒業。 3 卒業。の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前