富子幻舞-1
―――京の都、
―――花の御所
――――空が白みはじめ、障子の白さが次第にはっきりとしはじめた頃、
“彼女”はゆっくりと閉じられていた瞼を開けた。
寝床の中でそのまま首をひねり、傍らにいる“彼”が瞼を閉じ未だ眠りの世界の住人であることを知る。
無言のまま、傍らの彼を起こさないようにしてゴソゴソと寝床の中から這い出す。
身体を起こした時に
寝床から這い出した彼女の長く艶やかな黒髪がサラリと微かな音をたてて、
枕元そして畳の上に垂れ下がる。
ぼんやりと部屋の輪郭が浮き上がりはじめた中でも、何も身に付けていない彼女の白い裸体は一番鮮明に見ることができた。
豊かな胸と尻、そしてくびれのある腰回りを持った裸体だった。
そこには、単なる若さだけでは具わることのない“大人の女”の色香があった。
昨晩遅くにこの部屋を訪れてから実際に眠りにつくまでの間、
彼女は“彼”を迎え入れ、その愛技の前に何度となく淫らな声を上げていた。
彼女自身、その名残・余韻を身体のあちこちに感じている。
――――極力音をたてずに枕元に脱ぎ捨ててあった白襦袢を手にすると、両膝をついたまま袖を通していく。
襦袢の中に自らの身体を収めてしまうや、そのままゆっくり腰を上げ、黒い帯で腰回りを手早く締める。
―――シュル・・・シュル
―――キュッ・・・・・
帯を締める時も極力音をたてないようにしているのが分かる。