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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-2

障子の前に立ち、そろそろと横に滑らせていく。

人1人が通れる間隔が開いてから、彼女は自らの身体をその間隔に滑り込ませ、当初のように音をたてないように障子を閉めた。





障子には彼女の全身のシルエットがくっきりと映し出される。


やがて衣擦れの音も気にしているかのように、
ゆっくりとかつ音をたてないように静かにその場を離れていった。


白い障子の表面から、黒い女性の影が消えた。










―――これが嵐山から帰っきてからの“彼女”の朝の行動。


6日に1回の割合で寝静まった夜半にこの部屋を訪れ、
先程のように空が白み人が起き出してくる前に部屋から去っていく。



嵐山から花の御所に連れ帰ってきた彼―――賀茂右近が目を覚ました時には、
部屋からは彼女の姿は煙のように消えてなくなっていた。









―――彼女の名前は、
日野富子。




―――足利幕府8代将軍・足利義政の御台所(正室)
であり、



―――義政の息子・春王を産んだ女性である。



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