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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-4

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「北山の、能舞台・・・・」


侍女の言葉を何気なく反芻していた富子の脳裏に、
今まで忘れかけていた
“古き情景”が突如として鮮明なものとなり一面に広がっていく。


それは積み重なっている幾重もの記憶の断層の底にあって、このまま彼女の中で知らぬうちに風化してしまってもおかしくなかったもの。



そして脳裏に広がる情景と共に、
そこにいた人間の姿も鮮明に蘇ってくる。


それは若かりし日の富子自身、
そして―――――





「・・・・・・・」










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――――京都北部



―――北山





―――北山、というと大抵の人は“鹿園寺・金閣”を思い浮かべるだろう。

3代将軍足利義満が西園寺家の別荘を改築して自らの御座所とした場所。

一時は政治の中心となった鹿園寺の中心には金箔で覆われた3層の黄金楼閣・金閣がそびえ、四季を問わずその輝きを放ち続けている。



だが義満死後、政治の中心地は再び都の中心部・花の御所へと移り、

鹿園寺についても金閣と一部の建物除き 悉く破却・解体された。

これからの処置は、父・義満と対立していた将軍義持の為した業であった。


だが北山自体はその桜や紅葉が織り成す四季の情景のお陰で、

現在に至るまで将軍家や公家、武士、庶民にとっては足を運ぶに相応しい名所となっているのである。




北山に向かう道中、
賀茂右近はじめ限られた数の供回りと侍女を連れ自らは輿に揺られながら、

富子は輿についている窓を開け、ふと外に見える風景に目をやった。


以前夏場に訪れた嵐山の時に比して、
北山に近づくに連れて辺りの山々は次第に赤みがかったものになっていた。


季節は秋真っ盛り。


四季の中で一番“物思い”をしやすい季節だとも言われている。


そう、輿の中から外を見つめる富子自身のように――――――


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