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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-3

島島島島島島島島島島島


「―――御台所様は本当にお綺麗になられましたわ。・・・そう、あの嵐山から帰られてからでしょうかしら・・・」



背後から肩へ打ち掛けをかけてくれる侍女のため息交じりの言葉を聞きつつ、
富子は目の前の鏡越しに無言で微笑みながらも僅かに頬を赤らめていた。



そんな富子の羞じらいの表情とは裏腹に、
この頃富子は息子・春王を次期将軍の座につけるため水面下の工作を活発化させていた。


対抗馬である夫・足利義政の弟・義視の後見人が前管領・細川勝元であることを考慮して、

7ヵ国を支配する大大名・山名宗全を春王の後見人に担ぎ出すことに成功。

反細川の大名や五山の寺にも接触して連携を策し、
前関白・一条兼良の人脈から貴族勢力への働きかけも開始している。


夫・義政以上に政治家の素質を持つ日野富子の力量がこの時期に開花し、存分に発揮されているといえる。




そうした政界の駆け引きのような刺激こそが、富子をしてその美しさを活性化させているともいえる。


無論彼女自身が子供を出産したばかりで、

それ以前に比べて成熟した女らしさを醸し出してきたことも大きい。

白い肌は透き通るような輝きを増し、黒髪にはみずみずしさが際立っているかのようだ。

富子の身体からは独特の甘い体臭が漂うのが普通だったが、その体臭の甘さでやえ濃密になっているかのように思える。
富子に長年仕える侍女でさえ、そのように思えるくらいだった。


しかし決定的な理由を上げるとするならば、

やはり嵐山散策時、一条家の別荘を訪れた時に一夜を過ごした時に彼女が出逢った男・賀茂右近のお蔭であろう。

彼に対して己の身体を開くことによって得た自信と充実感が、
今の彼女にとって何よりの活力になっている―――――










「・・・・時に御台所様、お聞きになられましたか?北山の件を」



「え?」



侍女がふと口にした言葉に、
思わず富子は首を傾け、直接相手の方を振り返った。



「北山の能舞台が近々取り壊されることになったそうでございます」








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