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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-18

「富子様・・・・・」



自らの脇差しに富子の掌を導いた後、
勝元は顔を富子の左耳に近づけて囁きかける。

立場ではなく本名を呼ばれたことで、
富子は身体の奥底から甘い痺れとえもしれぬ恍惚感をおぼえ思わず身震いしていた。


富子の黒髪を掻き分け掻き分け唇を耳元に近づけつつ、
勝元は上体を倒して富子の身体を畳の上に押し倒す形を取っていた。

今まで彼女の身体に回していた両手を抜き取ると、
顔は耳元に近づけたままで着物の帯に手をかけていた。



―――シュル・・・シュル・・・・



「 !!っっ・・・・・」




音をたてて自らの帯がほどかれていくことに富子は無意識に身体を捻り、自らの体勢を変えようとする。

しかし彼女の口からは屋敷の者に急を知らせる大声ではなく、

じわじわと身体を侵食し始めていた感覚に耐えようとする“呻き”とも“喘ぎ”ともいえない声。



勝元の上半身によって富子の両手ものし掛かられた格好になっていた。

しかし富子の身体は今まで体験したことのないような展開と反応にどうしてよいか分からない状態にあり、
富子の右手も勝元の脇差しの柄に添えられたままだ。


言わば勝元によってなすがままの状態にあった富子。


「だめ・・・だめです、右京大夫殿・・・・」



「どうぞ勝元と呼んでください、富子様・・・・・」


「か、勝元殿・・・・・」




年上の臣下に言葉でさえ誘導されるなか、
もはや富子には抵抗する気はなくなっていた。



―――シュル・・・・・



自らの腰を締めていた帯が全て解かれ、くつろげられた小袖の隙間に勝元の手が差し入れられる。



「ぁあ・・・・・」




喘ぐようなため息を発し、富子は自らの頬を勝元の頬に押し付けつつ、

脇差しに添えていた手を動かして のし掛かってくる勝元の背中に回していた。


富子自身初めて、

女の本能の赴くままに
男を受け入れていた瞬間だった。





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