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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-17

「・・・う、右京大夫殿。何ですかこれは」



「と、言われると?」



「こ、このような無礼・・・・私は将軍御台所・・・」



「あの瞬間から、御台所様の顔と視線を忘れることができません」



「 !!? 」



弱々しい口調ながら詰問調の富子の言葉を、

勝元の告白が一瞬にして封じ込める。



男からそのような言葉をかけられたのは、
富子には初めての経験だった。


将軍家に輿入れするまでは他の男との接触を断たれた状態で過ごし、

ひたすら名家・日野家の令嬢として育てられてきた少女時代。


将軍家に輿入れしてからも夫との間に男女の交わりはあったというものの、

それはあくまで義務の範囲から逸脱するものではなかった。

しかも夫は乳母・今参局の支配下にあり、心の通いあう余地もなかった。



そんな心の間隙を、
勝元はあの能舞台での視線の絡み合いで察したのだろうか。


そんな風に考えを巡らせかけた富子の右手を、
勝元の熱を帯びた左手が包み込むようにして上から握りしめてくる。



「 !!? 」



「・・・どうぞ全ての役職・名誉をなげうって忍んで参った我が気持ちを、察していただきたいと思います」



「う、右京大夫ど・・・・」


「もし私を慮外者とされるならば、
どうぞ我が脇差をもってご成敗ください・・・・・」


「そ、そんな・・・・・」



予想外の展開の連続に困惑する富子の右手が勝元に握られたまま誘導され、

そのまま密着された勝元の腰付近にたどり着く。


そこにはあるのは、鞘に収められた脇差しの柄――――






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