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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-12

(何・・・・何かしら。こんな気分・・・・)



初めて体験する感情の発露に戸惑いながら、無意識に富子は胸に手をあてていた。



その時、



( !!! )



富子は自分を見つめてくる強い視線を感じ、
はっとして思わず視線を感じる方向に瞳を動かす。


そこには、
義政から授けられた盃を一息で飲み干したばかりの、
若き管領・細川勝元の顔があった。




(・・・・・・・・)



2つの視線が重なりあって1つとなり、

富子と勝元は互いに無言のまま相手の顔から視線を外すようなことはない。

いや、外せなかったといった方が正確かもしれない。

特に富子の方は、夫・義政よりも勝元に対して“意識”していた直後だったせいもあって、

勝元の発する何気ない眼の輝きにすら、心がときめきざわつく。



もしや、と思い周囲の目を気にしてしまう富子だったが、宿敵・今参局をはじめ、い並ぶ人々の関心は細川勝元自身や次の猿楽の演目に移っていたため、

富子自身の変化に気づいたものはいなかった。

それは隣り合って座っている夫・義政についても同様だった。







―――カポンッ、カポン・・・・・・



次なる猿楽の演目が始まる。

重なり合っていた視線は、勝元自身が目を逸らし将軍の御前から退出したことで再び分かたれた。



「・・・・・・」



周囲の喧騒や鼓の音に惑うことなく、

富子は舞台から立ち去っていく勝元の背中をじっと見つめていた――――











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