富子淫情-12
「右近殿・・・・・」
堪らなくなった富子の口から、
懇願の言葉が漏れ出る。
「貴方は先ほど私の世話をしてくれる。そう言われましたね?」
「はい、富子様。確かにそう申しました。嘘偽りではありません。」
その返答に頷き、
富子は庇に身体を預けたままで、庭先にいる右近に右手を伸ばした。
「では貴方に頼みがあります。私の中で、貴方が欲しいと何かが疼いている・・・・。
貴方の手でこの疼きを止めて欲しい・・・」
一瞬の沈黙。
そして右近は富子の言葉の意味を理解した。
無言で頷くと、
伸ばしてきた富子の手をさっと握りしめ、
自らも音もなく縁台に上がった。
次の瞬間には
富子の身体は宙に浮き
引き締まった右近の両腕で抱き上げられていた。
右近の胸元に頭を預けると、
やや鼓動の早くなってきている心音が微かに聞こえる。
「寝間へ・・・・」
富子の沈黙を“是"ととり、右近はそのまま富子を抱き上げたままで
富子の寝所の畳の上に足を踏み入れた。
燭台の灯りもない漆黒の暗闇の中に2人が消え、
僅かの後に
開け放たれていた三方の障子が次々に閉じられていった。