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富子淫情
【歴史物 官能小説】

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富子淫情-11

少し涼しいそよ風を肌に感じた時、
見下ろす富子と見上げる右近の目線が合った。


この時 右近は思わず目を背けかけた。
この時の富子の装束は
寝巻き用の白く薄い襦袢を黒帯で絞めているだけだった。

熱さの為に薄い襦袢は、汗のために彼女の肌に張り付き
その均整のとれた肢体がくっきりと露になっていた。
その身体を凝視しかけたことに右近は思わず目を背けてしまったかのように見えた。


そんな彼の気持ちを薄々気付きつつ、
富子は微笑み絶やさずに言葉を紡いだ。



「夕食の際、どちらに行かれていたのです?貴方の姿がなかったようですが・・・・・」


「申し訳ありません。離れの準備に追われておりましたので・・・・」


「そうですか・・・それにしても、こんな夜更けに庭石に座って何をなされていたのです?」


「・・・富子様の寝所に近づく輩がおらぬか、庭先にて見張りを努めておりました。」


その言葉に富子は一瞬目を丸くし
その後 今までにないくらい満面の微笑みを浮かべた。

「ほんに嬉しいお心づかい痛み入ります。

この別荘も良き場所にあり、
貴方のような方がお世話してくれる・・・・。

本当は明日にでも将軍御所に帰ろうかとも思っていたのですが、気が変わりました。
いかがでしょう?もう数日こちらに逗留させてもらうというのは?」


その言葉に右近は顔を上げると、富子の微笑みに負けぬような涼やかな笑みを浮かべた。



「身に余る光栄です。
ここの家人一同、心を尽くしてお世話させていただきます。」


「これで決まりましたね。御所には私の方から使いを出しておきましょう。

“もう数日、嵐山に滞留する"

と・・・・」



富子は右近をじっと見つめた。

初めて会った時から感じていた精悍さと涼やかさを併せ持った風貌。

決して美男とは言い難ったが、
静かさの中に野性さも同居しているという異質な雰囲気に、
富子の心はときめいた。




異性に対してこんな気分になったのは初めてかもしれない。

夫・義政、帝や上皇に対しても感じなかった気持ち――――





富子の中で
欲望の焔がゆっくりと燃え上がりはじめた。

目の前にいる右近を求めて―――――




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