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お隣さん
【若奥さん 官能小説】

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紀子の場合-1

 夜の7時。
 夕飯が出来上がる時間に夫から電話がかかってきた。

 「わかったわ。それじゃあ夕飯は要らないのね。はい。はい。大丈夫よ、お仕事がんばってね」
 
 私の名前は樋口紀子(ひぐちのりこ)。今年で35歳になる専業主婦。
 夫の名前は樋口雄二(ひぐちゆうじ)。私よりも2つ年上で仕事は営業マン。給料は高いが、休日出勤は当たり前。家にいてもパソコンの前で仕事をするほどの仕事人間で、私とはあまり話しをしない。
 

 結婚して2年。
 夫とはお見合い結婚だった。
 出会った初日、少し高めのレストランで食事をした帰り際、夫から「これを機にお付き合いできればと思います」と交際を申し込まれた。

 それから1年。私たちは順調に交際をして結婚することになった。

 結婚式や新婚旅行は夫の仕事の都合でカット。婚姻届も同様の理由で私1人で市役所に提出。

 結婚して私は優雅な生活を送れるようになった。
 夫は家にいることがあまりなく、夜の生活は数えるほどしかない。このままいくと子供を作らないままおばあちゃんになってしまいそうだ。

 文句の1つでも言ってやりたいところだけど、夫に言っても変わらない。言われるとすれば
 「嫌なら離婚しよう。僕はそれで構わない」
 と無表情に冷たくされるだけ。
 高級マンションで悠々自適な生活を送ることに慣れてしまった後で、前の生活に戻れる自信はなかった。

 「今さらいらないって言われても・・・」

 テーブルの上には出来たての料理が並んでいる。
 今日は早く帰ると言っていたから腕によりをかけて作った。
 その先に待っている夫婦の生活を想像して、昔お気に入りだった下着を探して洗濯までしたのに、1本の電話で全てがダメになった。

 もう少し早く連絡をくれればよかったのに。
 いつもこうだ。
 早く帰る。明日は休みだ。だけど土壇場になって帰れなくなった。休みが伸びたと言われてしまう。


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