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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜
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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜-5

くすっと笑われた。
「七穂。日向 七穂(ヒュウガナナホ)よ。またね、絢華ちゃん」

 あとに残ったのは、柔らかな花の香り。
「ー・・あの人が、」
お姉さまになってくれたら嬉しいのに。


「まあ、珍しい」

ふいに後ろから声がした。
「えっ!?」
驚いて振り返る。と、そこにいたのは迫力美女。長い黒髪を後ろで一つに結んでいる。こんな私でも知っている、有名人。
『春姫様』だ。つまり、『櫻姫様』である七穂さまのお姉さま。
「あの・・・?」
珍しいとはどう言う意味だろうか。
「七穂が、下級生と親しくするなんて」
本当に驚いたように見ている。
「春姫様?」
「あなた、・・・絢華ちゃんだったかしら?」
「あ、はい」
「七穂をよろしくね」
にっこりと微笑まれた。


「どう言うこと?」
教室に戻るなり、いきなり咲子さんに問われた。
「どう、って」
「だって、あの七穂さまよ?一年生に全く興味の無さそうな」
ーおいおい、そこまで言うか・・・
「まさか、妹になったの?」
千香子さんまでもが聞いてきた。
「違うよ。私が落としたロザリオを届けてくださっただけ。それだけよ」
「なーんだ。残念」
咲子さんが体を離す。
「あら?でもいつ落としたの?七穂さまと一緒にいる時じゃないとダメでしょう?ロザリオには名前が付いていないもの」
鋭い指摘を千香子さんに入れられる。
「別に、大した事じゃないから良いでしょう?」
場所を言わずに返事を返す。
 何となくだけど、私と七穂さまだけの秘密にしたかったから。
「あっやしー。何隠してんのぉー?」
咲子さんが茶茶を入れてくる。
「余計な詮索はしないの」
ぱしっと千香子さんが咲子さんの頭を軽く叩く。
「いーじゃん。少しくらい・・・」
ぶつぶつと文句を言っている。

「絢華さんの中に、閉まっておきたいのでしょう?」
にっこりと千香子さんが話しかけてくる。
「・・・えぇ」
咲子さんには悪いけど、私だけの中に入れておきたい。
「絢華さんは、七穂さまを好きになってしまったのね」
ふふふっと千香子さんが笑う。
「うん。そうみたい」
素直に認める。
「安心して。七穂さまにはまだ妹は居ないわ。頑張って」
ー安心して、と言われても・・。七穂さまの妹の座を狙っている人は多いはず。
「私は、見ているだけで良いや」






「絢華ちゃん」
次の日の朝、昨日と同じ場所で話しかけられた。
「七穂さま」
「ごきげんよう」
にっこりと微笑まれた。桜がバックになってとても綺麗。
「ごきげんよう」
「また会えたわね」
「ええ・・・」
 実は、少し期待していたのだが。
「桜の絨毯を見に来たの?」
「はい。ー・・・昨日は、私が踏んでしまったから。ちょっと残念で」


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