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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜
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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜-4

「急に、ごめんなさいね」
 廊下に出た私を向かえたのは、今朝の『綺麗なお姉さま』。
「ー・・・え?今朝の、・・・・櫻姫様?」
驚いて言葉が出ない。
「えぇ、そう。探すのに苦労したわ」
ふふっとその人は笑った。
「ここでは何だし、あちらに行きません?」
にっこりと笑う。
「え、あ、はい。」
つられて返事をしてしまった。


「今日は良い天気ね」
校舎から少し離れたところで、話しかけられた。
「まるで、マリア様の心みたい」
「はあ、」
良く分からない。何を言いたいのだろう。
と、櫻姫様は首をかしげた。
「まだ、分からない?それとも、気付いていないの?」
「え?」
「・・・アナタ、お姉さまはいて?」
突然聞かれる。
「いいえ、居ませんけど。それが、」
何か関係有るのだろうか・・?
「ロザリオ」
「え?」
櫻姫様がおもむろに自分のスカートのポケットに手を差し込む。と、出てきたのは青銅のロザリオ。 青銅は、現在の高等部一年生の色だ。
「はい」
ロザリオを持った手を差し出された。
「貴方のよ。今朝、落としていったでしょう?」
「えっ!?」
急いで自分のスカートのポケットを探る。
ーない。家を出るまではあったのに。
「す、すいませんっ。ありがとうございますっ」
ぺこっと頭を下げ、ロザリオを受け取る。
「あなた、幼稚舎に通ってなかったのね」
「?はい。何で分かったんですか?」
「『マリア様の心』を知らなかったからよ」
す、とロザリオを指す。指の先には、ロザリオのクロスしている部分に付いている宝石。
「マリア様の心は、サファイアでもあるのよ。幼稚舎で唄った歌の中にあったの」
「あ、」
成程。そういう訳か。

「お姉さまが居るのなら、落とさないように注意して貰おうと思ったのだけど」
居なかったのね。と笑う。
綺麗なその笑顔に、見とれてしまった。

 ところで、と私を見る。
「今朝、何をしていたの?」
「あ、桜を」
口籠る。桜は桜だが、落ちた桜だ。落ちた桜の花びらで出来ていた絨毯に心を奪われてしまったのだ。
どう言えば良いのか分からず、困っていると、
「・・桜の絨毯。素敵よね」
「え・・・」
「この季節になると、私も見に行くの。花びらが敷き詰まった、道。まだ誰も踏んでいないと、嬉しいのよね」
ふふっと櫻姫様は笑う。
「櫻姫様・・・」
私も同じです。
「あなた、名前は何て言うの?」
「絢華ですっ。依咲 絢華」
そう、と微笑む。
「じゃあ、絢華ちゃん、もうロザリオを落としてはダメよ」
それは、あなたの妹に渡す物だから。
「はいっ」
「それと、」
す、と肩に手を置かれる。
「襟が曲がっていてよ。気を付けなさい」
それじゃあ、と去って行こうとする所を呼び止める。
「あのっ、名前をっ」


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