駅弁-2
私達は窓の外の景色を見ながらお菓子を食べながらおしゃべりに夢中になってた。
「お手洗いに行ってくるね」
妹はそう言って席をたった。
しかし、時間をおかずすぐ戻ってきた。
「ずいぶん早いのね」
「お姉ちゃん、通路に変なおじさんがいてトイレに行けない。どうしょう」
「え？」
この電車は３両編制 で私達は１両目に乗っていた。
お手洗いのあるのは二両目だけで行くのに連結部分の通路を通らなければならない。
「失礼しますって言って前を通ればいいよ」
「なんか怖い人なの」
「怖そうな人なの？」
私は心配なので妹について行く事にした。
電車は、以外に空いていて充分に座れるらはずなのに…
立ってるなんて不自然なものを感じた。
妹は、怖いって言ってたけど私には、キモ……って印象だった。
一言で言えばキモおやじだ。まあ確かにある意味怖い…。
そんな内心をおくびにも見せない完璧な笑顔をニッコリとうかべる。
「すいません。隣の車両に行きたいので通らせてください」
「おう、いいぞ。通りな」
「ありがとうございます」
妹が、男の前を通り抜けようとした時
「お嬢ちゃん、駅弁がいいのかい？」
「はあ？」
「さっき、ホームで駅弁って騒いでいたろう」
「時間がないのでやめたの」
「俺が、駅弁してやろうか？」
「はあ？駅弁くれるの？文法おかしいよ。」
「俺が、駅弁でくわえさえてやるよ。」
「食べさせてくれるの？」
「ああ、あーんして食べさえてやるぜ。へへへっ」
キモおやじが、下品な笑いを浮べてる。
「いらない！赤ちゃんじゃないもん。おじさん、小学校からやり直したほうがいいよ。文法おかしすぎ」
「いい加減にしてください！私達は小学生ですよ。条例違反になりますよ！」
「なんだ、お姉ちゃんのほうは駅弁知ってるんじゃないのか？経験済みか？」
いい加減うっとしい。
深くゆっくりと息を吸い込む。
「ん？なんだ？」
「きゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ！」
私は、力の限り、悲鳴を上げた。
「なんだ？」
「どおした？」
前後の車両から、かなりの数の乗客が、集まってきた。
「この人が、私達の体に触ろうとするんですーっ！」
目をウルウルさせて周囲の人に訴える。
「なんだと！痴漢だ!」
「こんな小さい子達に…酷い奴だ!」
「おい!誰か車掌を呼んで来い！」
キモおやじが、慌てる。
「待ってくれ、誤解だ!触ろうとなんかしてない」
「駅弁でおじさんのを無理やり食べさせるって言ってた･･駅弁ってお弁当の事じゃないの?」
意味も判ってないくせにナイスだ。
「何だとこのやろ!」
「ロリコン!変態！」
キモおやじ･･･ふくろだ…。
そこへ車掌さんが到着。
「次の駅でおりてもらいましょう！」
キモおやじは、車掌が、どこかへ連れて行ってしまった。
私は妹がお手洗いを済ませるまで、近くで待っているとさっきの車掌さんが、やってきて、少しだけ話を聞かせて欲しいって言ってきた。
私は、「おじさんにお手洗いに行きたいので通してくださいと言ったらＨなことを言いながら、触ろうとしてきたんです。とっても怖かったの」と泣きながら（うそなき）で訴えたら、すぐに「もういいよ。ありがとう」って開放してくれた。
「なにか、あったの？」
「ううん。なにも席に戻りましょう」
個室から出てきた妹と席に戻る。
その後はごく平穏の旅となった。
「ところでお姉ちゃん。恭吾爺って誰?」
「何言ってるの…前に会った事あるでしょ。と言っても無理か･･･」
「前って･･覚えてないよ。」
「･･･赤ちゃんだったからね」
「で、誰?」
「昔、ママの実家は、大地主だったそうよ。で恭吾爺は、そのころは、作男として働いていたけど。そのご農地改革後も恭吾爺は、小間使いとして残ったらしい。
「大地主？作男?農地改革？さっぱり？結局？」
「結局…爺やってこと」
「爺やがいるなんって、ママって結構お嬢様だったの」
「だね」