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幼き日の思い出
【その他 官能小説】

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駅弁-3

出発から2時間後,目的の駅へと到着した。
「お姉ちゃん、どこの出入り口で待ってればいいの?」
「なに?」
「ほら、西口とか、北口とかってあるんじゃないの?」
「田舎の駅だよ。出入り口なんて一箇所しかないよ」
「そうの?田舎ってそうなんだ」
「もっと田舎なら無人駅だよ」
「全部機械なの?」
「機械もないわよ」
「えっ?切符は、どうするの?」
「電車の中で車掌さんから買う」
「降りるときは?」
「車掌さんに渡すか、駅の改札口にある箱に入れるの」
「なんだ機械あるんじゃん」
「機械じゃないよ。ただの金属の空缶だよ」
「そんな適当なの?」
「以前見たのは、ハトサブレの空缶だった」
「なんかスゴ…」
二人でそんな無駄話していると急に名前を呼ばれた。
「美紀ちゃーん、由貴ちゃーん!!」
私達を呼んだのは、20歳前後の男の人だった。
「お姉ちゃん、この人が恭吾爺?」
「馬鹿っ…そんなわけないでしょ。従弟の恭介お兄ちゃんでしょ。以前、会ってるわよ」
「えっ??知らない」
「ごめんなさい。恭介お兄ちゃん。由貴は赤ちゃんだったから覚えてなくて」
「ああ。いいんだよ。覚えてなくて当然だよ」
恭介お兄ちゃんの後ろに優しそうなお爺さんがいた。
「こんな遠くまでよくお出でくださいました。美紀お嬢様、由貴お嬢様。」
「ほら、この方が恭吾さんよ。由貴」
恭吾爺は、深々とお辞儀をする。
「初めまして恭吾爺」
「由貴!年上の人に失礼でしょ」
「だって、ママも恭吾爺って言ってたし」
「それはママにとっては爺やだけど私達には、目上の方なのよ!」
「いえいえ、滅相もない。お嬢様のお子様なら、やはり、じいやです。
お二人ともじいやとお呼びください。」
「そうだよ。美紀ちゃんも由貴ちゃんも爺やと呼んであげな。そう呼ばれるのが嬉しいんだから」
「そうなんですか?」
「はい。まさか。生きてるうちにお嬢様のお子様のお世話ができるなんて思いもよりませんでした。長生きしたかいがありました。」
「・・それじゃあ。よろしくお願いします。爺やさん」
「爺やさん、お願いしまーす」
「爺、二人の荷物を…」
「はい。お嬢様方お荷物は爺がお運びします。」
「えっ?でも…お年を召した方に重い荷物を持たせるなんて…」
「おいおい、美紀ちゃん、年寄り扱いのほうが、よほど失礼だよ。これでも野良仕事で鍛えられてるから俺よりも力あるくらいだよ」
「あっ!ご、ごめんなさい!」
私は、慌てて頭を下げる。
「いえいえ。お気になさらないでください。実際90過ぎてる老いぼれですじゃ」
「えっ?」
恭吾爺は、私と妹の荷物を軽々と担ぎ上げている。
確かに見かけは、老人だが、その力強さはとても90過ぎとは信じられない。
2人の荷物を恭介お兄ちゃんの車に乗せるとママの実家に向けて出発した。
ママの実家は、この駅から、車でさらに1時間以上かかる。
車は、どんどんと山道に入っていく。
鬱蒼とした森の中を通る道を走っていく。
私と妹は、後部座席にいる。
「なんかすごいね。今にもトドロがでてきそう」
「なんだい。それは?」
運転席の恭介お兄ちゃんが、不思議そうに聞いてきた。
「アニメ映画に出てくるキャラクターで森の妖精なの」
私が解説する。
「ああ。あれか…」
結構有名なキャラクターなので恭介お兄ちゃんも思い出したらしい。
「トドロは、どうか判んないが。妖精なら出るよ。なあ?爺」
「本当?」
思わず私も妹も身を乗り出す。
「ええ。妖精も出ますし。妖怪も出ます」
「ヨーカイ?って河童とか?小豆洗いとか?」
「妖怪は知らないが妖精ならちいさいころ見たことがる」
「本当?!」
「ああ。大人になると見えなくなるらしい」
「ああ。よくそう聞くよね」
「まあ、妖怪や妖精なんか、簡単に会えないが、熊には、よく出くわすから、注意しなよ」
「熊??」
「ああ。一人で・・・いや2人だけで森の中に入ったりしないように」
「はーい。」
2人声をそろえて返事する
「由貴ちゃんや美紀ちゃんなら、きっと、頭から丸呑みされちゃうぞ」
「えーっ!!」
急に車のスピードが落ちる
「ほら」
恭介お兄ちゃんが、道まで張り出してきてる木の枝を指差す。
ころころとした小さいふわふわの生き物が、きょとんとこちらを見てる。
「わー可愛い。あれってリス?」
「正解」
「すごーい。ペットショップ以外で始めて見た」
「本当に妖精とかも出そうだね。お姉ちゃん」
再び車は、速度を上げ山道を走り出した。
1時間かかって、少し開けた場所に出た。
小さな集落に到着する。

集落の中で一番大きな家屋が、祖父母の屋敷だ。
庭も広い古い大農家といった感だ。
私達は、祖父母に挨拶のあと以前のママの部屋に案内された。
外観も中もほとんど純和風なのにこの部屋だけ洋室だった。
ママがいた時、この部屋だけママ好みにリフォームしたそうだ。
ベッドが、2つ置かれてる。
これは、私達が、遊びに来るのにあわせて新たに用意されたものだった。

その日の夜
ベッドで横になってると枕元に枕を抱えた妹が来た。
「お姉ちゃん、一緒に寝ていい?」
「あのね…、今日、初日だよ。もうホームシックなの?」
由貴は、今にも泣き出しそうな顔をしてる
「一緒がいいの」
「しょうのない子」
私はベッドの真ん中で寝ていたが、端による。
「お姉ちゃん、ありがとう。」
表情が、ぱっと明るくなり枕を隣に置いてベッドにもぐりこんできた。
「もうっ、子供なんだから」
「子供でいいもん。お姉ちゃん大好き」
「ばかなんだから」




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