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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-6




もう真っ暗になった人気のない道を、瑞稀は歩いていく。
その表情は、とても落ち着かない。
いくら近道といえど・・・

「・・何で街灯つけないかな、ここ」

そう。ここは大通りより少し外れた道。
大きな公園に出たりして、昼間は人が大勢いるのだが、夜となると話は別。
まず、子連れが居ない。そして街灯が無いから散歩やジョギングする人もいない。
この時間は老人も家を出ない。
つまり。

「人っ子一人居ないってこういうことだろうな・・」

もう一度ため息をついた瑞稀は、青い携帯電話を出そうとリュックを下ろして足を止めようとした。
しかし、真っ暗闇の中で足を止めるなどという度胸を持ち合わせていない瑞稀は、歩くスピードを速めた。
残念なことに、真っ暗闇だと再認識したおかげで瑞稀の恐怖心が震え上がってしまった。

「・・・ヤバイ・・メチャクチャ怖い・・!!」

公園に出られれば、大通りに抜けられる道があるから、そこを目指せるし明るいだろう。
それでも、それまでの道が怖いし、第一公園自体が広い。
公園に出ても、中で迷ったら・・・。
そう思った自分を凄く後悔した。

「あぁ・・明日はちゃんと定期券確認しよう・・」

普段の学校生活で忘れ物をしても、こんな風に思った事は一度もないが、また明日にでも同じような怖い思いするくらいなら、確認の時間はとっても全然構わない、いや、むしろ取りますハイ。

というくらい、瑞稀のなかでは怖さを増していた。

「・・あー・・なにやってんだろ・・」
「本当に何やってんだよ」

自分のすぐ後ろから聞こえた声に瑞稀の全てが止まった。
そして、冷や汗がタラリ。後ろをゆっくり振り返るとそこには・・・!

「きゃああぁああ!!!」
「うあ!や、八神!オレだよ!鈴乃!!」
「・・・え?」

瑞稀は慌ててリュックから携帯電話を取り出し、明かりを声のした方へ向けた。
そこには幽r・・もとい、鈴乃拓斗が呆れ顔で立っていた。

「た・・・くと・・」
「・・久しぶり、だな」
「・・・うん・・」

先程まで考えていた事が頭を過ぎり、拓斗の顔を見れなくなる。
思わず、顔をうつむかせた瑞稀を見た拓斗は小さくため息をついた。
そして急に決意を決めたような真面目な顔をしたあと、表情を緩めて優しい声を出す。

「とりあえず、歩くか。帰り道途中まで一緒だし。その携帯電話、貸してみ?」
「・・う、うん」

その声に、少し固くなった心が落ち着いた瑞稀は持っていた携帯電話を渡す。
受け取った拓斗は携帯電話を閉じると、側面についているランプ用のボタンを押した。
すると、携帯電話を開いた時の明かりとは比べ物にならない程の明かりが漏れた。
そんな機能が付いていたことを知らなかった瑞稀は、驚いた。

「?これ、お前のじゃないのか?」
「いや、それ・・お兄ちゃんのお古貰っただけで・・メールとか家への電話とかしか使ってないから・・」
「へえ、驚き。まあ、小学生で携帯電話持ってる方がすげえもんな。」

そう言って、歩き出す拓斗になんとか置いてけぼりにならないように早歩きになって釣られて歩く。

「・・・鼓笛の帰りか?」
「え?・・あ・・うん。ちょっと、遅くなっちゃって・・」
「そっか。女なんだし、ひとりだし気をつけろよ?」
「あ、ありがと・・」

女扱いされた事は、今までに無かった。
顔が火照っていくのが分かる。それと同時に嬉しさも滲み出ていた。
それが、拓斗にバレないように慌てて会話を探す。

「え、えっと・・た、拓斗は・・どうしてこんな遅いの?」
「俺?俺は剣道の帰りなんだ。もうすぐ、試合だからって師匠が練習試合ばっか入れたりメニューきつくしたりするから、最近は帰るのが遅いんだ。」
「そ、そうなんだ・・。大変だね」
「まあ、しんどいけど・・楽しいしな。・・本当はバスで帰ろうって思ったんだけど、バス停で待つのが面倒になってさ。だからちょっとランニング気分で走ってたんだ。」


瑞稀はそこまで聞いて、あることに気づく。
いつもより、拓斗の喋る量が多い。いや、自分が少ないだけかもしれないが。
もしかして・・・

「(・・気を、遣ってくれてる・・?)」

気まずさが抜けない自分の為に、いつも通りに接しようとしてくれたいるんだと・・。
こんな、傷つけてばかりの自分の為に・・。

「・・・・」
「・・・」

再びうつむいてしまった瑞稀を見た拓斗は、顔を歪ませた。
だが、そこで終わってしまうなら、今日声をかけた意味がなくなると気持ちを引き締めた拓斗は瑞稀の手を掴んだ。






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