鶴女房-7
あるところに、誤って人間の罠にかかってしまった哀れな鶴がいました。
足を囚われ、動けなくなった鶴は、仲間に助けを求めましたが、仲間は素知らぬふりを通し、やがてその鶴を見捨てどこかへ去ってゆきました。
鶴は途方に暮れました。このままでは自分は野犬に食われるか、人間に見つかって捕まるか、それともこのまま餓死を迎えるか。いずれにせよ、暗い運命のみが待ち受けているのは火を見るより明らかでした。
そんな中。哀れな鶴の暗い運命に、一筋の光をもたらす者が現れました。
彼の者は、鶴の足枷を解き、解放するどころか、怪我の手当までしてくれたのです。
命を助けられた鶴は、彼の者に感謝しきれぬほど恩情を抱き、彼の者と添い、支える者となって恩を返すことを決意しました。
その晩、鶴は人の姿を取り、彼の者の家へ訪れました。そして、彼の者と相対しているうちに鶴は気付いたのです。
仲間に裏切られ、絶望に打ちひしがれていた心を、優しく包み込んでくれた、そのひだまりのような暖かさに惹かれ、彼の者を慕っている事に。
そう、鶴が彼の者に抱いていたのは恩義ではなく、恋慕の情だったのです。
*
「そ、そんな…まさか…」
「私は知っています。貴方様は金や名誉や地位よりも、大切なものを持ち合わせているのを――」
与平が罠にかかった鶴を助けた時、周囲に人一人としていなかった。故に目撃者がいるはずなどない。しかし、目の前の彼女はその時の状況を事細かに把握している。
ならば、導き出される答えはただ一つ。
「おまえさんは、あの時の…!?」
「与平様。もう、わたくしは自分の気持ちを抑えることが出来ません。わたくしは貴方様のことを、お慕い申しております…!」
与平の唖然と開いた口が、彼女の柔らかい唇によって塞がれる。
そして、息もつかせぬ間に、彼女は舌を口内に侵入させた。
「んっ……ちゅ…」
彼女の舌は意思を持った生き物の如く蠢き、与平の舌を蔓草のように螺旋状に絡みとる。
突然のおつるの行いに当惑しながらも、口の中を満遍なく舐め回す肉厚な舌の感触によって、頭が熱に浮かされ、ふわふわとした心地いい感覚に陥り、次第に自分からも積極的に舌を動かし始める。
「っ…んちゅ…くちゅ…ぬちゅ……んふぅ」
そうして、二人の舌と舌による口内の撹拌は、小一時間続いたと錯覚するほどに長い間行われた。
やがて十分に堪能し満足したらしいおつるは、ようやっと与平を解放する。
顔が離れた際、口と口の間に銀の糸が名残惜しく紡がれた。
「っん……ふぅ、ごちそうさまでした…。ふふ…与平様のお口。とても美味しゅうございましたわ…」
「はぁ…はぁ……お、おつるさん…」
「わたくし、与平様の事をもっと知りたいのです…。だから、教えて下さい…」
おつるは、細くスラリと伸びた白魚の手のひらを、衣服の下から与平の肌に直に滑りこませる。
潜り込んだ手は、へそを起点に蛇のようにするすると這い、やがて股間へと辿り着いた。
「与平様は私を慰みにした時。一体わたくしをどのように辱めていたのでしょうか…」
彼女は既に屹立しかかっていた彼の肉棒に、華奢な指をそっと添える。
そして、そのままゆっくりと上下に擦り始めた。
「こんな風に、自分のものを擦りながら、どんな淫らな空想をなされていたのですか…?」
「そ、そんな…。こと、とてもじゃ、ないけど、言え、ない…くっ」
「恥ずかしがらなくても、いいのですよ。自分に素直におなりなさい。わたくしは与平様の全てを知りたいだけなのですから…」
おつるは優しく諭すように、耳元で囁いた。
彼女の生暖かい吐息が耳朶をくすぐり、甘い誘惑の言霊が鼓膜を伝って与平の頭に浸透する。
己の分身を撫でる肌触りの良い指の感触と相俟って、与平の思考を蕩けさせた。
「俺は、その…、おつるさんの、なんというか…」
「遠慮なさらないで…何言われてもわたくし怒りませんから…」
「わ、分かったよ…、お、おつるさんの…大事なところを。俺が自分の手で…弄り、ました」
「ふふ、なるほど……。いいですよ、与平様。貴方が夢想した時と同じよう、わたくしのあそこを触っても…」
「え…?」
おつるはそう言うと、自らの股座を見せつける体勢になった後、着物の裾を一捲りした。
すると下半身を隠すものは一切無くなり、女の秘所が与平の目の前に曝け出される。
途端、不規則に高鳴っていた与平の心の臓がひときわ大きく弾けた。
おつるの下腹部に引かれた綺麗な一本筋。その閉じられた溝から薄桃色の襞が少しはみ出していた。
覗き見した時には確認出来なかったが、割れ目の周囲には髪と同じ色の白い毛がうっすらと繁っている。
生まれて初めて見る女性の性器を目の当たりにした与平にとって、女体の神秘の象徴とも言えるその蠱惑的な光景に、生唾を呑まずにはいられなかった。
「さぁ、どうぞ…。お好きなように、このおつるめの秘所を弄んで下さい…」
「――ほんとうに良いんですか?」
「はい…」
「し、じゃあ。触るよ…。おつるさん……」
与平は震える手で、己の生涯において縁のないと思われていた女性の性器へと手を伸ばす。
中指と人差し指を差し出したまま溝口へと到達すると、まるで高価な芸術品を扱うかのように、スルスルと彼女の割れ目を行き来させた。
「ひぁ…、そう…それで、いいんです」
「おつるさんの、すごく綺麗…触り心地もいい…」
「ふふっ…ありがとう、ございます…ん」
与平の指先が割れ目を往復する都度、おつるは小さく悲鳴を上げ、身体が自分の手の動きに合わせて、快感に身を震わせる。
彼女の反応の良さに気をよくした与平は、調子に乗り、愛撫をいっそう激しくした。