〈不治の病・其の三〉-2
『ところで、亜矢はどうしてる?』
あまり興味はなさそうだが、とりあえず聞いたように院長は聞いてきた。
既に頭は金の事で一杯のようだ。
『茶碗も箸も無縁な生活みたいですよ。なんせ“家畜”ですからねぇ』
オヤジがポケットから取り出した二枚の写真には、裸に赤い首輪を着けた姿が写されていた。
乳首には鈴がついたピアスを付けられ、四つん這いのままで怯えた視線を送っていた。
背景は暗くて分からないが、そこには複数の男達が潜み、性欲処理として飼っているのだろう。
『……次の牝豚候補はいるのか?亜矢みたいな美人さんがさぁ?』
『…そんな簡単には見つからない……もう少し待ってくれ……』
院長は更に困った顔を浮かべ、オヤジ達をチラリと見た。
最初のうちは、容姿はそれなりでも“患者達”は満足していた。
それが何度も繰り返されていくうちに、患者達の要望は強くなっていった。
『顔はキツめで綺麗なナースで……』
『胸は大きくて脚も長い奴で……』
患者達の要望に応えられる人材など、そんな簡単に手に入る訳がなく、やっと手に入れたとしても、患者達はあっという間に〈消費〉してしまう……。
麻衣の次に生贄にされるナースの目星は付けていたものの、まだまだこの病院に呼ぶには日数が掛かってしまう。
『じゃあこれから連絡つけておくよ。三日もすれば来るだろうから、クビだって言っておいてね』
『あ、あの……』
言いたい事だけを告げると、二人の患者は部屋を後にした。
院長の心の中に僅かな葛藤はあったようだが、唯我独尊を地でいく院長は、すぐに心の痛痒など忘れ、金づるの選定に頭を廻らせた……。