うさぎ-4
「何言ってんだい?アンタの馬鹿旦那が一発ヤラせて欲しいっていうからこっちは股を開いてやっただけじゃないか。だいたい10年かそこらしか生きられないんだ。旦那や子供たちを縛り付けるようなやり方、アタシは絶対にしたくないね。そんなに心配だと騒ぐのなら、首に縄でもつけておけばいいじゃないか」
「な、な、なんて失礼なの!?絶対に許さないから!!」
「そうよ、みんなで集まって、アンタなんてこの村から追い出してやるから!!」
相手のがなりたてる声が届かないかのように、彼女は静かに体を丸めて毛づくろいを始めます。
「どうぞお好きに。ほらほら、アンタたちがこんなところで息まいてる間に、大事な子供や旦那がさらわれないように見ておかなくて大丈夫なの?」
あとは母親うさぎたちが何を言っても、彼女は返事ひとつしませんでした。皆、呆れたように彼女を放って帰っていきました。
彼女は去っていく皆の後ろ姿を見つめながら、ひとりため息をつきました。
別にみんなに喧嘩を売りたいわけじゃない。みんなの気持ちを、やり方を批判したいわけじゃない。けれども、たった10年ほどの命を生き抜く中で、その時間をどう生きるかという自由くらいは子供たちにも与えてやりたいなあと、ただそう思うだけなのでした。
同じ理由で、彼女は決まったパートナーを持たない生き方を選びました。そのほうが自分にとっても相手にとっても自由でいいと思ったからです。一生を添い遂げたいと思うほどの相手は幸か不幸か現れなかったし、ちょいちょい誘いをかけてくる男どもに穴を貸してやることで、可愛い子供たちにも恵まれました。
もちろんパートナーがいない分、子供たちが生きる術を身につけるまでの間はとても大変で、ときには血を吐き、体中の毛が抜けてしまうほどのストレスを抱えたこともあるけれど、それでも彼女は自分の信じた道を進む充実感と満足感を選んだのです。