第35話 交わりの樹液-1
「そんな・・・母さん・・・母さんと・・・僕・・・母さんと!・・・・・。」
慶は、目を疑うようだった。
今まで一緒に肌を交わしてた睦美が、突如と母親の陽子に入れ替わったのだ。
しかも、自分の腰つきで乱れてる陽子は、睦美を想い描きながら過ちを繰り返した時に、サブリミナル効果の映像のように入ってくる姿と同じだった。
すでに、睦美と出会った時から始まっていた。
睦美に母親の面影を見出したのでは無く、睦美そのものが、慶にとって母親の陽子だったのだ。
それは、過ちを繰り返し時から肌を交わすまで全てにだった。
そして今、最後の至福と共に、慶の目の前で、陽子として映って見えたのだ。
それでも、慶の腰つきは止まらなかった。
自分の帰る道が、もう母親でしかあり得なかったからだ。
もう、頂点は近づいていた。
『はあ・・・はあ・・・慶・・・慶!・・・慶は私だけの物!・・・絶対に・・・誰にも渡したくない!・・・・・。』
陽子は、慶の顔を胸元を手繰り寄せると抱きついた。
「はあ・・・はあ・・・母さん・・・僕も母さんから離れたくない・・・・・。いつまでも一緒に・・・母さん!・・・母さん!・・・・・。」
慶は、手繰り寄せらた陽子の胸元で舌を走らせながら、腰つきを激しく刻み始めた。
「あっ・・あっ・・あっ・・そう・・・もっと・・・もっと奥まで・・・慶・・・慶!・・・・・。」
しかし、慶の前で乱れてるのは母親の陽子では無く、紛れも無く睦美だった。
睦美は、目の前で繰り広げられる状況が掴めなくとも、慶の腰つきに満足しながら身体を委ねていた。
慶に母親を連呼されようと、ただ自分に母親の面影見出してるだけと思い、今の睦美にはどうでも良い事だった。
結局は、愛してるとか言っても、押し寄せる快楽の前では、ただの戯言でしか過ぎなかった。
慶にとって睦美が『母親』だったように、睦美にとって慶は、最高の至福へと導く快楽の源、『若い身体』だった。
そして今、お互いの私欲を目指して、頂点へ向かった。
「はあ・・・はあ・・・母さん!・・・母さん!・・・・・・。」
慶は、頂点が見えて来ると、陽子の腰を浮かすほど激しくなった。
「あっ!・・あっ!・・慶!・・もう・・・もう駄目!・・・・。」
睦美も頂点が近くなり、慶に促した。
慶もそれを察すると、陽子の汗と一緒に肌を交わしながら・・・・・
『そして・・・・・重なり合わせた肌が・・・・・激しく絡みついて・・・・・登りつめた瞬間・・・・・』
・・・・・最後を振り絞った。
「母さん!・・・母さん!・・・このままいくよ母さん!・・・・・。」
「良い!・・・このまま良いわ!・・・早く!・・・お願い!・・・一緒に!・・・慶!・・・慶!!・・・・・。」
「母さん!・・・母さん!・・・母さん!!・・・・・。」
次の瞬間、睦美の中には、慶の物が・・・・・
『初めて放たれる・・・・・若い蜜・・・・・』
・・・・・勢い良く放たれた。
二人は、それぞれの想いのままに頂点に辿り着いた。
それでも慶からは溢れ出る物があり、それを振り絞るかのように、ゆっくりと大きく数回ほど刻んだ。
また睦美も、久々の感触に満足気で、それを搾り取るかのように・・・・・
『それを欲する・・・・・熟した園・・・・・』
・・・・・慶の腰つきに合わせた。
そして腰つきを止めると、お互いの結ばれた間からは、二人の交わる愛の結晶が溢れだし・・・・・
『そこに溢れ出る・・・・・交わりの樹液・・・・・』
・・・・・睦美の拒む先へと伝って、シーツの上に滴り落ちた。
しばらく二人は目を閉じながら、繋がったまま抱き合っていた。
その中で、慶の物はみなぎり引く事は無く、睦美の中で脈打っていた。
そして、その二人の表情には、別れの悲しみは見えずに、お互いに満たされた至福の表情を浮かべていた。
やがて、慶のみなぎりが治まると、陽子からゆっくりと抜いて目を開けた。
そして、その視線の先には、すでに陽子はおらず、慶の胸元で目を閉じながら、至福の表情を浮かべる睦美の姿に戻っていた。
さらに辺りを見渡すと、さっきまでのバラ園の風景が、元の部屋に戻っていた。