第32話 母親としての想い-2
睦美は、辿り着く事は出来なかった。
ただ、振り出しに戻っては、母性を注いで若い身体を求めるしかなかった。
しかし、それでも構わなかった。
形は変われども、そこに変わらぬ愛があれば良かったのだ。
そう、決して愛を受け入れてはならない存在になっても・・・・・。
そして今、睦美を母親と想う気持ちを背負いながら、禁断の扉を開こうとしていた。
「母さん・・・母さん!・・・・・・。」
慶は、思い詰めていた物が解き放れたかのように、母親を連呼しながら、腕に抱いた睦美に抱きついた。
そして胸元に顔を埋めると、激しく身体を重ねた。
それはまるで、胸元で甘える赤子のように、舌で転がしていた。
「はあ・・・はあ・・・母さん・・・母さん・・・・・。」
「そう・・・良いのよ・・・母さんで良いのよ・・・・・。」
睦美は、胸元の慶の髪を掻き乱しながら乱れた。
母親と想われる事に複雑な思いはありながらも、身体を重ねてしまう違和感に、只ならぬ胸の高鳴りを覚えた。
サイはもう投げられた。
振り出しに戻る事の出来ない、過ちのゴールを目指して・・・・・。
そして、その先の答えを探そうと、二人は激しくなっていた。
やがて慶は、首筋へと立てて、口づけを交わした。
その度に重なり合う肌が、汗でヌメり、お互いの興奮を誘っていた。
その身体から醸し出される体臭は香水の匂いもかき消していたが、二人は嫌悪感よりも、お互いを感じるように堪能していた。
もう二度と感じる事の無い、お互いの匂いを・・・・・・。
慶は口づけを止めると、また睦美を腕枕で寝かせて、睦美の物をまさぐった。
その指先は、一点を振動させながらも、睦美の物をかき分けて、悦ぶ先へと沈めて行った。
「あっ・・あっ・・あっ・・・・・。」
睦美は、指先が往復する度に悦んだ。
『色白の肌・・・・・細い身体・・・・・指先・・・・・』
その襲う快楽の中で、今まで想い描いていた情景が、頭を過っていた。
まるで、走馬灯を思うかのように・・・・・。
睦美は、別れを覚悟して身体を重ねるのは初めてだった。
その別れが過る中での快楽が、切なくて愛おしく感じて、それを名残惜しむかのように一つ一つを堪能していた。
その特別な想いの中で、今までの情景が頭を過ってしまうのだった。
それを堪能してるのも束の間、慶の指先は、睦美の拒む谷間へと走っていた。
「あっ!・・・いやっ!・・・はあ・・・はあ・・・だ・・・駄目よ、そこわ・・・絶対に・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
睦美は、押し寄せる快楽の中でも、そこだけは拒んだ。
今までも、求めれてきたが、自分の築いてきた品格を思うと、頑なに拒んできた。
夫の政俊さえでも、一度も立ち寄らせる事は無かった。
慶は、その拒む先がある谷間で、待ち構えるかのように、何度も往復させていた。
「お願いです・・・はあ・・・はあ・・・・・。今日は全てを感じたいんです・・・・・。睦美さん・・・いやっ・・・母さんとしての睦美さんの全てを・・・はあ・・・はあ・・・・・。お願いです・・・我慢して下さい・・・・・。我慢すれば、きっと至福が訪れるはず・・・・・。今日はお互いにとって、最高の至福を迎えましょう・・・・・。」
「駄目・・・絶対駄目よ・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
睦美は口で拒んでも、身体は拒否する事は無かった。
襲う快楽の中で、慶の言葉一つ一つに、身体を委ねたい気にさせらていたからだ。
誰も立ち寄った事の無い、今までで一番愛しい人だけの場所・・・そう思うと、本当の意味で結ばれるような気がしていた。
「はあ・・・はあ・・・いやっ・・・そこだけは・・・はあ・・・はあ・・・・・。」
睦美は、拒む中でも覚悟を決めた。
一旦覚悟を決めると、谷間で往復する指先がいつ襲い掛かるかと、睦美の背中にゾクゾク走るものがあった。
二人は、『最後』と言う名の元で狂いだしていた・・・・・。