「グランドホステス」-3
「うあああ。ホントですか?」
「女の子が『赤ちゃんが産まれました。』って大きな声で言ったものだから
お客様は驚きの声よ。そして赤ちゃんが泣き拍手が起こったのよ。めったにない体験
ね」
「よかったですね。」
「よかったじゃすまないの。無事に産まれたからよかったものの、
何かあったら大変なのよ。わかってる?」
「はい。でも、どうして産まれたんでしょう。」
「カウンターの近くで陣痛が始まっていて破水したって言ってたわよ。あの女」
「ええ??破水?あれはおもらしじゃなかったんですか?」
「まったく何を見ているのよ。もう完全に呆れた。」
「すみません。」
「それとね、あれは他人のパスポートだった。」
「え。」
「彼女、日本人じゃないって気がつかなかった?
生まれる子どもにK国の国籍がほしかったのよ。だから無理して搭乗した。」
「・・そうだったのですか。日本人に見えましたけど。」
「罰金ものよ。ゆりさん。会社は罰金を払うのよ。あなたの失敗で。」
「すみません。」
「赤ちゃんにはリリーという名前をつけるらしい。
あなたによろしくって。それが伝言」