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「グランドホステス」
【コメディ その他小説】

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「グランドホステス」-1

空港で働く地上係員をグランドホステス(女性)、略してGHと呼びます。
ご予約、お問い合わせ等の電話応対、チェックイン、出発便.到着便業務、
手荷物検査場でのご案内等々多岐にわたります。
今日の主人公はGHの高橋ゆりさん。
K国のKエアラインで働いています。

「空港のカウンターでチケットの確認、パスポート・ビザの確認が主な仕事です。
でも、わたしって時々ミスして・・山田先輩に叱られてしまいます。」
お待たせしました。ゆりさんの登場です。

今日も首のスカーフをなびかせて
お客様に笑顔で対応しています。

「お気をつけていっていらっしゃいませ。
いつもありがとうございます。」
パスポートとチケットをお渡しすると
いつもご利用いただく久村さまは
さわやかな笑顔で受け取ってくださった。
だからこの仕事は楽しいわ。
次のお客様はお幸せそうな子供づれの女性。
あたたかそうなコートを着たふくよかな方ね。
「ご利用ありがとうございます。
パスポートとチケットを拝見します。」
女性はポケットからすぐに差し出してくださった。
女の子がじっとこっちを見ている。
きれいなお姉さんって思っているのかしら、わたしのこと。うふ。

山田先輩が背後に歩み寄る。
嫌な予感。わたしのお客様に話しかけるのね。
よくあること、気にしないでいようっと。
「ありがとうございます。どうぞお気をつけて」
お返ししようとすると、山田先輩がさっと取り上げる。
「お嬢さんはおいくつですか?」
・・ああ。また。わたしのお客さまなのに・・いつもこれなんだから。
「10歳です。」女の子はじっと見つめたまま緊張して答える。
もっとあたたかく聞いてあげればいいのに。
山田先輩がライトでパスポートを照らしている。
まさか疑っているのかしら、こんな幸せそうな親子を。
「K国へはどのような目的で?」
「夫が仕事で行っていますので、会いに行くのです」
「さようででございますか。」
「失礼ですけど妊娠されていますね?」
あああ・もう山田先輩。失礼でしょ。ただのふくよかな体つきだと思います。わた
し。
「・・ええ。でも今は安定期で医者の診断書もあります」
驚き!ポケットから用意していたように診断書が出されたの。
「ちょっと失礼します。」
山田先輩がパスポートとチケットを持って奥に入っていった。
デスクの上司に相談するのね。でも、どうして??
不安そうな目でお客様が私を見る。
「ただいま確認しておりますのでもう少々お待ちください」

そう、別室ではこんなとき
秘密ファイルの要注意人物の写真と照らし合わせているの。
だけど、どうして?この二人をどうして疑うんだろう。
偽造パスポートのトレーニングを受けてきたばかりの山田さん
何か見つけるのかしら。

女性の顔が曇ってきた。
「どういうことですか?早く行かせてください。」
「今、確認していますので」
「早く、通して」
「お母さん。」
女の子も不安そうに母親を見つめる。
こんな時、わたしは何て無力なんでしょう。
後ろに並んだお客様も
いらいらした表情で私を見ている。


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