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「グランドホステス」
【コメディ その他小説】

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「グランドホステス」-2

山田さんが帰ってきた。
「少し質問させてくださいね。」
「ご主人はK国でどのようなお仕事をなさっているのですか?」
「技術者です。それ以上は申し上げられません」
「どこの州にいらっしゃるのですか?」
「@@@です。」
「それは空港からどのようにして行かれるのですか?」
「さあ、わたしは初めてですので、迎えに来てくれるはずです。」

山田さんは続ける。
生年月日や通っている学校まで女の子に尋ねている。
女性の肩が震えてきた。汗がぽたぽたと落ちる。
暑いのならコートを脱げばいいのに。
「早く行かせて」
女性がびっくりするほど大きな声を出した。
「何が問題なの?はっきり言ってよ」
その時、後ろのお客様が
「あ。床が濡れているよ」
女性は「あら、ごめんなさい」
と肩で息をしながら言った。
「あんまりいらいらすると、こうなっちゃうのよ。拭いてちょうだい。あゆみ。」
女の子はバックの中からタオルを取り出し拭いている。
女性は怖い目で私を睨んでいる。
わたしは早く行かせてあげたいのだけど・・。

「アイルスー」
わたしは耳を疑った。。
「アイルスーユー。リリー」
リリーはゆりというわたしの名前ね。
・・訴えてやると英語で言っているみたい。
わけもわからずわたしは怖くなる。
山田先輩はしっぽをつかんでやると
丁寧な言葉遣いのなかに迫力がある。
「あなたは何年(なにどし)ですか?」
すらすら答えていた女性がくちごもった。
「日本人ならエトを誰でも知っているはずです。」
山田先輩は勝ち誇った顔で言った。
「ヘビ年よ」
山田先輩が年齢エト対応表を見ている。
わたしも覗き込んだ。
パスポートの生年月日と合っている。
山田先輩が黙ってパスポートとチケットをわたしに渡した。
先輩の負けね。
わたしは満面の笑みをこめて
「大変お待たせいたしました。どうそお気をつけていってらっしゃいませ。」
特に丁寧にお辞儀をした。
女の子はじっとわたしから目を離さない。

荷物を全て子どもに持たせて
女性はゆっくり歩き出した。
タイツが濡れていることがわかる。
このとき、わたしは初めて変だなって思った。

客室乗務員のナツさんがわたしに会いに来たのは2週間後。
「リリーさんはどこかしら。リリーさんによろしくと伝言よ」
大またで歩き、すごい迫力で迫ってくる。
わたしってば、また失敗したのかな。
「あなたね、彼女を見破れなかった人は。もう呆れちゃう。
転職したらどうかしら。向いてないわよGHには。」
「はい。」
「あの日、離陸3時間後、女の子が急に『ドクター!ドクター』って叫ぶのよ
席に駆けつけると、女が汗だくで身体を震わせているのよ。」
「はい。」
「わたしが行って10秒後ね。その女が『うう』ってすごい声を出したの。
女の子が『産まれる』って叫んだの。
お医者様が駆けつけてくださって
コートをはずすと赤ちゃんがいるのよ。
水色の長いホースみたいなへその緒つけたまま」


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