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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第27話 異常な母性-1

「ねえ・・・慶・・・もう泣かないで・・・・・。」

睦美は慶の髪を、何度も優しくかき上げながら話した。

「分かったわ・・・今日は母さんで良い・・・あなたの母さんで良いわ・・・・・。だから・・・もう泣かないで・・・・・。」

慶は、その言葉に泣くのを止め、睦美の顔に視線を預けた。
その表情は、どこか泣き止んだ子供のようにあどけなく、睦美の母性をさらに燻ぶらせた。
睦美は、慶の眼鏡を外すと、頬に手をかざして、親指で涙を拭きながら続けた。

「その代わり・・・これで最後にしよう・・・・・。最後だけは・・・二人だけの素敵な思い出を作りましょう・・・・・。」

慶はそれに答える事無く、睦美の顔から視線を外して、だだをこねる子供のように、膝元で抱きついた。
先ほどまでの緊迫した空気が一変して、どこか緩やかになり、それに誘われるかのように睦美の表情は緩んだ。
思わず慶の背中を、子供をあやすかのように、何度も軽く叩いていた。

ポン・・・ポン・・・ポン・・・・・

その中で、睦美も昔を振り返っていた。

『うっ・・・うっ・・・ボールが捕れないくらいでなんだよ・・・・・。あんなに怒る事ないじゃないか・・・うっ・・・うっ・・・・・。父さんなんか・・・父さんなんか・・・・・』

それは、自宅のリビングのソファーで、幼い翔太が睦美の膝元で泣いてる光景だった。
政俊とのキャッチボールで、叱咤された事により、睦美に泣きながら甘えていたのだ。

「お父さんはね・・・翔太の事、嫌いだから怒ったんじゃないのよ・・・・・。翔太にね、もっともっと上手くなってもらいたいから言った事なのよ・・・・・。お父さんは、翔太の事が好きなの・・・好きだからこそ、つい夢中になって怒っちゃたんだわ・・・・・・。だから、お父さんの事は嫌いにならないで・・・・・。ねっ?・・・・。ほら〜・・・男の子がいつまで泣かないの・・・・・。」

睦美は、この時が好きだった。
夫に溺愛された息子を、何よりも一人占めに出来る時間だったからだ。
その時に、翔太の背中を宥めるように、睦美は叩くのだった。

ポン・・・ポン・・・ポン・・・・・

そして今、慶の背中を叩いていた。
良かったあの頃を思い出し、再び涙が溢れて、頬を伝いながら叩いていた。
その涙は、睦美の膝元で甘える慶の頬にも落ちていた。
その中で二人は、恋人同士には戻れない事を実感していた。
もうお互いには、寂しさを埋めようとする、温もりしかなかった。
そのわずかな温もりを温めなおそうと、睦美は気を取り直して涙を拭いた。

「ねえ・・・もう一度私を描いて・・・・・。最後にお願い・・・・・。」

睦美は立ち上がると、ジャケットを脱ぎ、ブラウスのボタンに手を掛けた。
そして一枚一枚を、ゆっくりと脱いでいった。
その光景は、まるで蛹から蝶へと変わるように美しく、普段見慣れてる慶でも、溜息が出るようだった。
恐らく、別れを感じる寂しさから、一つ一つを感傷的に捉えてしまうからだろう。
睦美は全てを脱ぐと、座り込んでる慶を立たせた。

「さあ・・・慶も脱いで・・・・・。」


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