第25話 告白-2
慶は、熱い思いを語りだすが、全ては睦美の気を惹く為に起こした行動だった。
睦美を自分の物にする為の、最後の偽りの線を描いたのだ。
それでも睦美は、慶の気持ちに飛び込みたい心境を押さえながらも沈黙していた。
慶は睦美に近づき、背後から両肩に手を掛けて続けた。
「でも・・・一人じゃ怖いんです・・・・誰か一緒じゃないと・・・・・。だから・・・僕には・・・睦美さん!・・・睦美さんしか居ないんです!・・・愛する人と歩みたいんです!・・・・・。」
「もちろん、睦美さんに家庭があるのは分かってます・・・・・。僕と同じくらいの息子さんが居る事も・・・・・。それでも・・・それでも睦美さんと一緒になりたいんです!・・・・・。幸せにしますから、お願いです!・・・・・。旦那さんと別れて・・・」
「ふざけないで!・・・・・。」
睦美は、肩に掛けた慶の手を振りほどき、怒りを露わに振り向き様に返した。
慶の自分に対する気持ちに嬉しくも思いながらも、根拠も無い非現実的な事を打ち明けられ、腹立だしくなっていた。
慶は、初めて見る睦美の表情に、血の気が引く思いがして、呆然とした表情を見せた。
「あなた分かってるの?・・・私達がどれだけ離れてるか・・・・・。三十よ!・・・三十も違うのよ!?・・・・・。こんなおばさんと、上手く行くと思ってるの!?・・・本気で言ってるの!?・・・からかうのはよしてよ!・・・・・。」
「そんな・・・睦美さん!・・・僕は、からかってなんかいません!・・・・・。本当に睦美さんの事が好きなんです!・・・・・。睦美さんと・・・睦美さんといつまでも一緒にいたいんです!・・・・・。だから・・・僕の事・・・信じて下さい!・・・・・。」
「逆上せるのもいい加減にして!・・・・・。あなた・・・あなたは、まだ若いから良いわよ・・・・・。そうやって夢を語って、人の心を弄んでれば幸せなんだから・・・・・・。私は・・・私は違うのよ!・・・・・。これから、どんどん崩れて行くの!・・・どんどん醜くなっていくのよ!・・・・・。あなた・・・これから同じ事言えるの?・・・十年も、二十年も先に、私の事好きだって言えるの!?・・・・・。」
睦美からは、大粒の涙が溢れていた。
今まで感じた、歳の差からくる不安感が、一気に涙と共に溢れ出たのだ。
慶は、頷く様に視線を下げて、悲しげな表情で沈黙した。
睦美の言葉に、返す事が出来なかった。
確かに、睦美の事は愛していた。
それでも、真意を付かれると、どこか軽率な気持ちがあるようで、自信が無かった。
身体を共にした、男女間の関係が初めての慶にとっては、尚更だった。
この愛情が、真意なのか、それともただの欲求からなのかと・・・・・。
しかし、今の慶にとって睦美を失う事は、全てが崩壊しそうで何よりも怖かった。
慶はたまらず、本音を切り返した。
「このままじゃ嫌なんです・・・・・。僕は・・・毎日一人になると、睦美さんの事ばかり考えてるんです・・・・・・。好きで・・・好きでたまらないんです!・・・・・・。でも・・・その間にも他の人・・・旦那さんと愛しあってるかと思うと耐えられないんです!・・・・・。僕だけの睦美さんが、僕以外の人と・・・・・。もう耐えられないんです!・・・・・。このまま続けていくのが耐えられないんです!・・・・・。だから僕は・・・・・。」
慶の言葉に、睦美の心は罪悪感に支配された。
元をたたせば、自分が蒔いた種・・・女を知らない男が、初めての相手に対して、本能的に逆上せるのは当たり前だった。
しかも、慶を虜にしようとした睦美の行為が、引き金にもなっていた。
『ジュルル・・・美味しいわ・・・ふふ・・・もちろん愛してる人のだからよ・・・・・。あら・・・まだこんなに出るわ・・・さすがに若いわね・・・ジュルル・・・・・。』
『良いのよ・・・まだ時間があるから遠慮なく言って・・・・・。慶の為なら何でもしてあげる・・・・・。』
・・・・・慶の為なら・・・・・
収集の付かないくらい依存した態度に、睦美は切り出す事を決意した・・・・・。