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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第24話 愛の共有-2

それでも、信号待ちで車と隣り合わになると、平素を装わなければならなかった。
ならば、慶に止めるように促せば良いのだが、そのシチュエーションで得る快楽に、睦美は虜になっていた。
回りの平穏な景色を目の前に、果てる事さえあった。
これも、慶とでしか堪能できない事・・・すべてが『最後』という言葉で、睦美は狂ったように、慶を感じていた。

「もちろん・・・はあ・・・はあ・・・僕は、睦美さんの事を彼女だと思っていますよ・・・とても大切な・・・・・。睦美さんは違うんですか?・・・僕は、睦美さんにとって、何ですか?・・・はあ・・・はあ・・・・・。」

慶は、睦美の手つきに感じながらも、顔は真顔になって尋ねた。

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・ちょっと・・・ちょっと止めてくれる?・・・はあ・・・はあ・・・・・。」

これは、慶の行為に対してだった。
慶は、手つきを止めると、睦美から離した。
その指先は、睦美の物で濡れていた。
そして睦美も、慶から手を離した。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・少し落ち着かせて・・・はあ・・・はあ・・・・・。」

睦美は脚を正すと、窓の風景に目をやり、しばらくの間、呼吸と一緒に気持ちを整えていた。
その表情は、想いに深けており、慶の問いに対して答えを考えていた。
車内は、しばらく沈黙した。
その中で、再び慶との別れを実感していた。
慶に悟られないように、普段通りに快楽に身を任せていたが、止めれば心に去来するのだった。
最後まで、快楽に身を委ねてる自分に、嫌悪感が漂う所もあった。

「睦美さん・・・あれから二カ月くらい過ぎましたね・・・・・。」

睦美が答えに困り、模索してる事を察して、慶は話題を変えた。

「そうね・・・もうそんなに経ったんだ・・・早いわね・・・・・。」
「本当・・・あの『慶君』が、まさかね・・・ふふ・・・・・。」

睦美も、思い出話に心が和み、表情が和らいだ。

「僕は、睦美さんと出会えて、本当に良かったと思ってます・・・・・。何か・・・強くなれたと言うか・・・生きる勇気が湧きました・・・・・。」
「それまでは、いつも死んだ母さんを引きずってました・・・・・。もう会えないのに、いつまでも永遠に・・・・・。どうにもならなくて、死のうかと思った事もあったんです・・・・・。死ねば楽になれるし・・・それに・・・母さんに会えるような気がして・・・・・。」

睦美は、慶の只ならぬ身の上話に、表情が厳しくなった。
慶は、視線を睦美に向ける事無く続けた。

「そんな時・・・そんな時だったんです・・・睦美さんと出会ったのは・・・・・。」

「やっぱり私は・・・。」

「違います!・・・それは違います!・・・・・。」

慶は、睦美の言い掛けの言葉を察して力強く否定した。

「何度も言いますけど・・・僕は睦美さんの事を、母さんの変わりだと思ってません・・・・・。確かに、一度は迷いました・・・・・。何度も・・・何度も悩みました・・・・・。それでも睦美さんは、かけがえのない人で・・・大切な人でした・・・・・。」
「こんな子供のような僕に言われて、信じてもらえないかもしれませんけど・・・・僕は・・・僕は睦美さんの事が好きです!・・・心から愛してます!・・・・。」

慶は、意を決したように話すと、睦美の膝の上に置いた右手の甲を、力強く握った。
もちろん睦美は困惑した。
ホテルに着いたら切り出そうとしてる、別れ話の事を考えると尚更だった。
それでも、睦美は嬉しかった。
短い間だったが、自分が愛した青年に、本気で告げられた事に・・・・・。
ここで切り出すべきなのだが、今の睦美には出来なかった。
少しでも、慶との愛を共有していたいからだ。

「私も・・・私も慶の事は愛してる・・・・・。」

睦美は、少し間を置いてから話すと、慶の握った手を、向かい合わせに指を絡めて握り返した。

「ありがとうございます・・・睦美さん・・・嬉しいです・・・本当に嬉しいです!・・・・・。」
「睦美さん・・・実は、大切な話があるんです・・・これからの二人にとって大切な・・・・・。ただ、今は言いません・・・ホテルに着いたら、ゆっくりと話します・・・・・。もちろん、聞いてくれますよね?・・・・・」

慶は、睦美に答えを促す様に、強く握り返した。
ここまでの経緯を考えると、慶の話そうとしてる事は、睦美には分かっていた。
それは別れ話を切り出そうとしてる睦美とは、正反対の事と認識していた。
睦美は、そんな複雑な思いもあり、言葉に出来ずに黙って頷いた。

車の外は曇り空で、フロントガラスには雪交じりの小雨がチラつき、睦美の心境を代弁してるかのように、物悲しい雰囲気が支配していた。
二人を乗せた車は、すれ違いの気持ちのままに、思い出のホテルへと辿り着こうとしていた・・・・・。


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