ツキのしずく-2
木の枝にかけたロープを固定させ、ひっぱってみた。僕の体重くらいなら支えられそうだ。
首を通す輪が風で揺れた。 驚くほど手際がよい。普段はゴミ袋の口さえしばれないのに。
・・準備が整った。僕は深呼吸をし、最後の酸素と遊ぶ。そして、ぶらさがってみた。
!? !!! 『く、くへっ。ぐわわわぁ。』すげえ苦しい。命を手放すのは楽ではないって事が分かった。
強烈にもがく。僕の目は白黒を繰り返し、葬式の垂れ幕みたいだ。
りんごや、みかんのぶらさがる気持ちってこれか? やっぱり今日はやめようと思った。
自分の行為に、命の限り抵抗しているその時だった。(チョリン)
・・はっ!この音は!! 僕は、お金が大好きで、特に、お金の落ちる音には敏感であった。
だから、この状況でも、その音が足元だったのをすぐに察知した。・・お金はどこだ?何円だ?
視界に5円玉が入った。・・なんだ。チロルチョコも買えやしない。口元に微笑がでる。
最後に笑えてよかった。「ご縁なんてねーよ。」 ・・・僕は抵抗をやめた。