『STEEL DUST GLAVES』人形舞刀篇-4
陸家片太刀六技の変化形が一つ、”軋”。
フランチェスカの剣先は、正確に人形の駆動器官制御チップを破壊した。
玲を見据え、首をしゃくる。
どうやら先に行けという意味らしい。
玲は先に向かおうと足を踏み出す。
「「「「「させるか!!」」」」」
五つの殺意が五つの武器に。
そしてそれは一振りの刀に制止された。
フランチェスカ、光を宿した彼女の瞳は言葉よりも雄弁に語る。
お前達の相手は、この私だと。
呼吸が乱れている。
内功が上手く練れない。
然し、玲は立ち止まらない。
彼の胸に去来するものは何か。
ふと、陸鈴音の顔が浮かぶ。
復讐の念か。
否。
深い怒りか。
否。否。
彼の胸に去来するものは酷悔。
此れは贖罪。
己の護れなかった者達への。
独りよがりな懺悔の、念。
扉が倒される。
白は笑んだ。
「「やれやれ扉も満足に開けられないのか」」
「よう、白。随分と小奇麗になったな」
二人の白を見据え、顔を歪ませる。笑っていた。
「お陰様でね」「お気に召すかしら」
白の妖艶な笑み。
「さて、ね。私にはそっちの趣味が無いものでな」
悠然に構える。
陸家体極八構の一つ、“鷹噛”。
己が身体の垂直に刀を。
そこから四方の何れかに振り下ろされる剣は、当に必殺。
それは白の知ることでもある。
なにしろ、この技で彼は一度死にかけたのだから。
「劉の居場所を知っているか?」
「いきなり他の男の話」「なんて嫌な人」
余裕の表情。
「私をね」「倒せたら」
両者、鏡の様に対極に合わせた白家四十八掌、始の型を構える。
「「教えてあげる!!」」
鼓膜に音が鳴るよりも速く、その網膜に像が焼きつくよりも速く、
白の繰り出す幾千の手刀が玲を襲う。
玲の剣型が“鷹噛”から“連雀”に変わり、
刃が奔る。
手刀と剣刃が交じる。
玲の刃の速度は数段と遅い、
然し、白の手刀は当たらない。
最小の斬撃で、白の猛攻を防いでいるのだ。
しかし、白の見事な連携に避けきれぬ筈がない。まさに、
「阿」「吽」
の呼吸。
圧している。当たり前だ。
白は笑む。
幾ら肉体を鍛えたとて、その速さは機械の駆動器官には劣る。
されど、気功は人が人間の範疇を越える為に創られた技。
どうして、
どうして、機械に劣る筈があろうか。
白の猛攻を縫って、白麗の横顔に玲の右手が掌の容をとる。
「なに」
触れれば気の爆発に依り塵と化す”妙掌刹那”楊明孔の技、燼掌。
一触即発。
「哈ッ!!」
白麗の顔が、特殊スチールカーボン製の頭蓋が即座に潰される。