第7話 満たされぬ営み-2
『若い青年が、自分を思い描きながら描いた絵・・・・・その身体、全てを求めるかのように・・・・・』
睦美は不意にも、自分の物に右手を当て、ゆっくりとまさぐり始めた。
満たされてない火照った身体は、徐々に導かれていった。
次第に、一点に中指を当て、小刻みに何度もなぞると、全身に鳥肌が立つような刺激が、睦美の体中を走った。
睦美は溢れる想いが堪え切れずに、慶の事を思い出していた。
『色白の肌・・・・・細い身体・・・・・指先・・・・・そして・・・・・汚れの知らない若い身体・・・・・。』
それは、あの日の列車の中で思い浮かべた情景と、同じだった。
『色白の肌を交わして・・・・・細い体に包まれ・・・・・指先で導かれながら・・・・・そして・・・・・汚れの知らない若い身体を染めていく・・・・・』
越えては行けないと何度も心に思うのだが、快楽に導かれるまま慶を欲していた。
睦美の身体は、知らぬまま慶を求めていた。
『・・・・・その身体に包まれながら至福の時を向かえる・・・・・』
若い身体に包まれて迎える悦びに、想像ながらも興奮を覚えた。
『慶君・・・はあ・・・はあ・・・慶君・・・はあ・・・はあ・・・・・』
・・・・・慶君・・・・・
睦美は目を閉じながら声を押し殺すように、心の中で何度も慶の名前を呼びながら、指先で激しくなぞった。
『まだ・・・・・誰をも知らない・・・・・若い男の・・・・・物・・・・・』
『私の中で・・・・・包み込むように・・・・・受け止める・・・・・』
絶頂が来る度、睦美の妄想は歯止めが効かなくなり具体的になっていた。
それは、長い間身体を重ねてきた政俊の隣で、慶を向かい入れてるような感覚にもなっていた。
その罪悪感が、睦美の興奮をさらに誘った。
それを裏付けるかのように睦美からは、さらに溢れ出てきていた。
『そう・・・・ゆっくりと私の中で・・・・何度も深く・・・・・交差する摩擦に・・・・・繋がる悦び・・・・・』
『お互いの温もりを感じながら・・・・・繰り返される行為の中で・・・・・何度も交わす口づけ・・・・・』
『そして・・・・・重なり合わせた肌が・・・・・激しく絡みついて・・・・・登りつめた瞬間・・・・・初めて放たれる・・・・・若い蜜・・・・・それを欲する・・・・・熟した園・・・・・そこに溢れ出る・・・・・交わりの樹液・・・・・』
そして背中を反ると、久々の頂点を迎えた・・・・・。
睦美は、満たされた表情を浮かべながら、しばらく余韻に浸っていた。
それはまるで、愛する者と終えた後のようだった。
確実に、睦美の身体は若い物を求めていた。
それ以外は考えられなくなり、募る想いが焦りだしていた。
睦美は、時の流れで崩れ掛けた自分に、手を差し伸べてきた慶が、愛おしくてたまらなかった。
ならば、このまま想い募らせ終わるくらいなら、身を委ねてみようと思い始めていた。
例えそれが、母性として受け止められようと、自分が愛せたら構わなかった。
そう思い込んだら、何かが吹っ切れたような気持ちにさせられた。
睦美は、再び天井を見上げると突然目を開き、一点を見つめながら考え込んだ。
そして、もう一度慶と接触してみよと頭を過っていた。
ただ、それにはいくつかの偽りが必要だった・・・・・。
・・・・・摘まれない青い果実を・・・・・熟した園へと落とす魅惑の罠・・・・・