ハロウィンの朝-1
「おはようございます」
「んっ?んん…?」
谷本は、聞き覚えのある声で起こされた。
「なんで、おまえがここにいる?」
ここが、自分のアパートの部屋である事を確認する。
「ひどーいっ!覚えてないんですか?」
谷本は、慌てて記憶の糸を手繰り寄せようとするが、全く、覚えてない。
「確か、ラーメン屋でラーメンを食って・・・」
「その後、私も食ったんじゃないですか」
ぽっと頬を赤らめるありす。
「うそつけーっ!」
慌てて否定するが、全く記憶がない。
しかし、ありすのふざけた態度が、事実でないことを物語っていた。
「どうしてここにいる、正直に言え」
「昨日、止めたのにあんなに飲んで送ってきてあげたんじゃないですか」
「それは、昨日だろ。なぜ、今いる」
「昨日から、いるからでしょう」
「う・そ・を・い・う・な」
「もうっ、初めてだから優しくしてねって言ったのにあんなに激しくして」
「いいかげんいしろ!」
「ほーい。昨日、送ってきたら部屋があんまり汚いから、お掃除に来たんです」
「はじめから、そう言わんか!」
見回すと既に部屋は、綺麗に掃除され、生理整頓もされていた。
「朝ごはんも用意しましたよ」
「ああ、ありがとう」
谷本は立ち上がり着替えようとして、ありすがまじまじと見つめてるのに気がついた。
「おい、着替えるからせめて他所を向いていてくれ」
「へっ、へへへへへ、減るもんじゃなし、いいじゃねえーか」
「バッカヤロー!!」
ありすは部屋から外へとたたき出された。
「もう、谷本一尉のいけずー!」
扉の前でむなしく叫ぶ。
「朝から元気だな」背後から声をかけられて振り返るとフェンスの手すりの上に1匹の黒猫がいるだけで他に人影はない。
「きゃあー。猫が、猫が話したーっ!」
「いや、そういうぼけはいいから」
「あい。お一人?つーか、お一匹?」
話しかけてきたのは、カミラの使い魔黒猫のラスカルだった。
「そういう、言い回しもいいから」
「カミラちゃんと一緒じゃないの?」
「カミラを助けて欲しい」
「なにか、あったの?」
「あの偽カミーラが、カミラの家で待ち伏せしていて、捕まった」
「なんて事!」
「奴等、俺の事に気がつかなかった。おかげでこうして助けを求めにこれたってこと」
「奴等?」
「あの偽者を操る黒幕がいたのさ」
「黒幕か・・・。でも猫の体でここまで来るの大変だったんじゃないの?」
「カミラを助けるためさ。どうって事ない」
黒猫のため目立たないが、傷や汚れが、全身についてる。
ここまで来るまでの道のりが容易いものではなかったことを物語ってる。
「苦労したのね・・・。」
「どうって事ないって」
「きっと、魔法少女ありす番外編 黒猫らすかるの大冒険がでるわ」
「出ねーよ・・・」
「それは、そうと。よくここが、判りましたね」
「ああ。最初に君の家に行った。君の使い魔が、ここを教えてくれた」
「そっか、新衛門さんが教えたのね」
「カミラもそうだったが、君のネーミングもいかがなもんだか?」
「そお?」
「それよりも、あれはーどうなんだ?」
「ん?」
「使い魔ってのは、猫やカラスみたいに、街中にいても、目立たないのがいいと思うぞ」
「えーっ!猫さんはいいけどカラスは可愛くない。カラスがいいなら同じ鳥類だしいいでしょ」
「鳥類たって、あれは・・・目立ちすぎるだろう」
「可愛いでしょ?」
「ガタイがよすぎるだろう!」
「130cmしかないよ 体重は、45kgあるけど、小柄でしょ?」
「人間ならな・・・」