林田みずきの嫉妬、そして憎悪-7
翌日、仕事が終わるのを待ちかねて家に飛んで帰った。はやく一樹くんに会いたい。前夜に準備したとっておきの洋服と下着を身につけて、マミと一緒に居酒屋に向かった。
集合予定の時間よりも、10分ほど早く店についた。仲間たちはもう半分ほど集まって、わいわいと盛り上がっている様子だった。マミとみずきの姿に歓声があがる。
「おお、綺麗どころがきた!」
「今日はふたりともかわいいね!さあ、こっちに座って」
仲間たちは30代から50代までの男性が多く、女性は圧倒的に少ない。そんな中でこうやってちやほやしてもらうのも、みずきはとても気分が良かった。マミはさっそくトオルの隣を陣取って嬉しそうに話しかけている。とりあえずみずきも適当な席に座り、男たちに交じって世間話に興じた。
集合時間を少し過ぎたあたりで居酒屋の入口付近にいた仲間たちからざわめきが起こった。何事かと顔を上げると、ちょうど斎藤一樹が店に入ってきたところだった。
「一樹くん・・」
立ち上がって駆け寄ろうとしたみずきはその場に凍りついた。彼の隣には、あの加藤エリナの姿があった。マミが驚いたようにみずきを見つめている。
斎藤はみずきのことなど目に入らないようで、照れた様子で仲間たちにエリナを紹介した。
「加藤エリナさん、俺の・・・彼女なんだ。みんなに紹介したくて連れてきた」
エリナは長い髪を揺らせて「よろしく」と微笑んだ。仲間たちはふたりを冷やかしながら席へ案内し、途中でマミを含めた何人かはそんな斎藤を咎めるように「みずきのことはどうするんだ」と詰めよった。
斎藤はそこで初めてみずきがいることに気付いたようで、気まずそうな顔をしながらもきっぱりと言い切った。
「林田とはつきあっていたわけじゃない。いつも付きまとわれて迷惑していただけだ」
場の雰囲気がこれ以上ないほど冷えていく。エリナは何も気にするふうではなく、勧められた席に座りもの珍しそうに店の中を眺めていた。
「ま、まあ、とりあえずみんなそろったよな?よし、それじゃ久々の飲み会だし、乾杯しようぜ!来月のレース頑張ろうな!!」
場をとりつくろうようにリーダー格の男、大塚が立ち上がってグラスを手に取った。それにあわせてまわりのみんなも次々にグラスを持つ。みずきもぼんやりとしたままグラスを掲げた。