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『癒しの館』〜変態マッサージ店〜
【レイプ 官能小説】

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『癒しの館』〜変態マッサージ店〜-1

「すみません、またあのお客さんなんですけど・・・」

 猫の手も借りたいほどの忙しさの中、アルバイトの女の子が形よく整えた眉尻を下げて泣きそうな顔でわたしに訴える。いつものクレーマーに困らされているらしい。苛立ちを押さえこんで笑顔で答える。

「いいよ、こっちで対応するから・・・そんな顔しないの。お疲れさま!」

 ホッとしたような表情で頭を軽く下げ、彼女は売り場へと戻っていった。ふう。薄暗いバックヤードに積みあげられた段ボール箱からいったん手を離し、軽く肩をまわす。ごりごりと嫌な音がするだけで、強張った首筋から肩にかけての重くだるい感覚はちっともマシにならない。

 台車の上に放り投げてあったジャケットを羽織る。埃や糸くずを払い、手鏡を見ながら簡単に身だしなみを整えて売り場へ出ようとすると、また何人かの声が呼びとめる。

「店長、この書類のチェックお願いします」

「すみません、来週お休みが欲しいんですけど」

「この商品、今日が納期なのにまだ届いてないんですけど、どうしたらいいですか」

 軽い頭痛に襲われる。ちょっとは自分で判断しろ、と言いそうになるのをぐっと堪える。口角を上げて、とりあえず笑う。どんなに忙しくても早口になってはいけない。どこまでも冷静に。穏やかに。

「そうね、悪いんだけど書類はもう一度だけあなたが見直してくれたらもうそのまま本部へ送っていいわ。それと、ああ、あなたのお休みの件だけど、ちょっと代わりに入れる人を探してくれると助かるんだけど、お願いできる?それから・・・そうそう、納期の件は直接業者に問い合わせてみてくれるかしら」

 それぞれの顔を見ながら、出来る限り優しく話す。そうするとみんな微笑んで言うことを聞いてくれる。ハイ、と小気味よい返事と共にそれぞれの持ち場へと戻っていく。

若い子たちの扱い方に神経質なまでに気を遣うようになったのはいつからだろう。この小さな紳士服の店を任されてすぐの頃は、よく感情のままに怒鳴り散らして失敗していた。それは何の解決にもならないばかりか、売り場の雰囲気を悪くするだけ。

 あらゆるマイナスの感情を飲みこんで、客にも社員にもアルバイトにも、とにかく笑顔で優しく接する。そして譲れることは相手に合わせてどこまでも譲る。

ずば抜けた営業能力があるわけでもないわたしが、この8年間で唯一身に付けた処世術。おかげでこの不景気の中でも売り上げは前年度をわずかに超える数字をキープし続けている。本部からの評価も悪くない。

 ただ、毎日自分の中の大切なものが擦り減っていくような気がしている。心にも体にも、限界を超えた疲れが溜まっている。すべてを放り出したくなるときがある。

 いけない。余計なことを考えている暇は無い。パン、と両膝を叩き気合いを入れ直して売り場へ出た。


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