ハロウィン前夜-1
その日の夕方。
カミラは、箒に載り帰宅した。
カミラの自宅は、とある山中の麓にある。
東京ディズニーランドのシンデレラ城そっくりな建物に住んでいた。
自分の部屋の窓に箒で降り立った。
「ずいぶんと少女趣味なお家ね」
不意に声をかけられ驚く。
「貴女は！」
「留守中にお邪魔していたわ」
声の主は、今朝、ゴーレムを操っていたカミーラだった。
「なんだと！セキュリティーが働いてたはずなのに」
「普通に入れたわよ。魔法も使わずにね」
「ばかな！ノイシュヴァンシュタイン！どういうことです！？」
ノイシュヴァンシュタインは、カミラが、魔法で作り出したこの家のセキュリティーシステムだった。
「どうしました？マスター？」
実体のないノイシュヴァンシュタインの声だけが部屋に響く
「どうしましたじゃないです！何で侵入が平然と家の中にいるんですか？！」
｢申し訳ありません。しかし、私は侵入者を感知していません。」
｢どういうことです？この女を感知出来ないという事なのですか」
「私には、マスターの反応が２つあるように感知されてます。」
「なんですって？貴女は、一体何者なのですか？」
「ま、ひどいわ！ママ！自分の娘を忘れてしまったの？」
「失礼ですわ！娘どころかまだ結婚さえしてませんわ！」
「あら。結婚などしなくても子供は生めますわよ、ママ」
「なんですって！なんてふしだらな事を平気で口にするの！私は、まだ処女です！……なんてことを言わせるの！」
「ママが自分で勝手に言っただけですのに」
「ママって言うな！貴女なんて知らない！」
「知らなくたって実際に私のママなんだから、しょうがないでしょ」
「きゃーっ」
突如カミラの足元から、ロープが、まるで蛇のように巻きついてきた。
ロープは、足首からふくらはぎ、太ももと這い上がってくる。
「いやーっ！」
太ももから、尻、腰、胸と巻きつきながら這い上がり、首に到達すると、異なる、動きをし始め、やがて亀甲縛りでカミラを縛り上げ、さらにロープの端は、天井に伸び、カミラを天井から吊り下げた。
「結構な眺めだ」
始めて見る男が姿を現した。
「誰です？」
黒いスーツに黒いサングラス。いかにも怪しげな男だ。
「今回の黒幕さ。お初にお目にかかるアルベルト男爵だ」
「黒幕？」
「そう、この女を作ったのもゴーレムで街を襲わせたのも私の命令さ」
「作った？」
「ああ、君の細胞から作り出したコピーだ。君から生まれてので、彼女にとって君はママというわけだ。」
「こぴー…」
「もっとも、本物とすべて同じ精巧なコピーさ。君と直接会うのは、初めてだが、他人の気がしない」
「どういう意味ですか？」
「君は実に具合がよかった」
「なんのことです？」
「私は君自身の知らない君の事を知ってるということさ。せっかくだから、教えてあげよう。君は、実に名器だ。すごくよかったぜ」
「？まさか…」
「そう、本物と寸分たがわぬコピーですみからすみまでじっくり楽しませていただいた。」
「このーっ。獣め！てめーっ、絶対、ぶっ殺してやる」
「このまま伯爵にくれてやるのは、惜しい気もするが、処女じゃないと伯爵は、買わんだろうし。コピーで我慢しとくか」
大人のカミーラは、呪文を唱えると光に包まれカミラと同じ年に変身した。
「いったい何をするつもりです！」
「この姿なら君を友達と信じてる連中を罠に掛けられるだろう」
「なんですって！やめろーっ！」
「とりあえず、今夜は、子供姿の君をたっぷり陵辱させていただくとしよう」
「いやーっ！やめてーっ！」
コピーといえど自分と全く同じ体を弄ばれるかと思うと耐え難い。
男爵は、子供に姿を変えたカミ−ラと供に部屋を後にする。
同時刻とある市航空自衛隊駐屯地 正面ゲート前。
帰宅する自衛隊員達の中に谷本の姿を見つけるとありすは、大きな声で名前を呼び、手を大きくぶんぶんと振る。
「谷本一尉ーっ！」
「大声で呼ぶんじゃねー！」
周りを気にしながら話しかける。
「照れなくてもいいじゃないですか」
「大体、なんのようだよ」
「なによーっ！協力したんだよ。ごはんぐらいおごったって罰は、当たらないでしょ」
そう言うとありすは、無理やり腕を組み歩きだす
「…ラーメンだかんな。期待されても困る」
「別に何でもいいよ。谷本一尉と一緒ってのが大事なの」
「何だよ。俺みたいなうだつのあがらん３０過ぎのおっさんといて楽しいか？」
「谷本一尉は、おっさんと違います」
「そりゃ、どうも」
「今日は、お友達のうちに泊まってくるって親に言ってあるの」
「おいっ、冗談はよせよ。からかうのもいい加減にしろ」
「てへっ…。」
「ラーメンだけだぞ！」
「ほーい」
夕方から夜へ移りつつある中ありすは谷本にぴったり寄り添う。谷本は特に邪険する事もなくそのまま歩いていく。