THANK YOU!!-7
その様子を見た先生たちが瑞稀の足に気づいた。
倉庫から出た瑞稀は、一旦降ろされた。
田中先生が担架を持ってくる為と、保健室の先生が応急処置をするためだった。
体育館から保健室までは結構な距離がある。それを、止血もせずに運ぶのは状況が悪化するだけだった。
秋乃と拓斗は名前を呼び続ける。
だが、瑞稀の顔は真っ青で、呼び掛けにも反応がない。
「瑞稀!瑞稀っ・・!眼を、覚まして・・!」
「しっかりしろ、八神!」
応急処置を終えた保健室の先生が、
「・・とりあえず、止血は成功したけど・・いくつもの傷が深かった分、流れた血の量が半端じゃない。応急処置でも持ちそうにないわ・・。病院に、運ばないとマズイ状況ね・・。」
「そんな・・!」
眼を覚まさない親友の隣で、秋乃の顔が青ざめる。
拓斗はかがみ込んだ姿勢で自分の表情を悟られないように伏せた。
その顔は、一見すると泣き出しそうな小さな子供のようだった。
「・・田中先生が来たら、担架で駐車場まで彼女を運んでもらいます。そして私の車で近くの大学病院の緊急センターに連れていきます。中岡先生は彼女の保護者に連絡を」
そこまで指示を出した保健室の先生は、瑞稀の両隣にいる秋乃と拓斗を見た。
二人は、言われることが分かっていたが引く気はなかった。
「ウチは瑞稀に着いてく!このまま家になんか帰れっこない!!」
「俺だって!八神が辛いのに・・家にいられるか!!」
勢い良く顔を上げた二人は、教師二人に向かって叫んだ。
涙目の二人をなだめようと担任である中岡先生が声をかけようとしたとき、保健室の先生が、それを制した。
「そう言うと思ったわ。・・今回だけ、特別よ。8時まで。それまでは着いていてもいい。けれど、それを過ぎたら絶対に帰りなさい。子供が外に居ていい時間では無いわ。いい?」
その言葉を聞いた二人の顔が、少し明るくなった。
ちょうど、その時。
担架を持った田中先生が帰ってきた。
その後、瑞稀を車まで運び、瑞稀のランドセルを持った秋乃と拓斗を乗せて病院へ。
中岡先生は瑞稀の家に電話をし、事のあらましを説明して病院に来てもらうよう話した。
眼を覚まさず、どんどん青白くなっていく瑞稀を見続けている拓斗は、後部座席に寝かせた瑞稀の頭部分で床に座り込んで、瑞稀の少し冷たくなった手を強く握り締めた。