志津子 -3
身支度をして何食わぬ顔で三人で下りて行くと、父親は相変わらず下の子のお絵描きの相手をしていた。
「こんな子を見ると今からでも、もう一人子供が欲しくなりますよ」
俺たちに気づくと、父親はそう言って笑った。
(おたくの息子は俺の女房と子作りしてきたばっかりですよ)俺は微笑み、そう思いながら志津子を見た。
まだ少し上気した顔で笑いながら「奥さんを手伝ってきます」そう言って台所の方へ去って行った。
裏に菜園が有ると聞いて、園芸が趣味な俺は見せて貰おうと一人で裏庭に回って見に行った。
さすが昔から有る家は敷地も広く、菜園と言ってもへたな畑くらいある広さで沢山の種類の野菜が植えられいた。
園芸好きな俺は飽きもせず見て回っていた。
そこへ奥さんが野菜をとりに出てきた。
「奥さん、すごいですね。うちの箱庭菜園とは大違いで…羨ましいなぁ」
俺が笑ってそう話を向けると、はにかんだ様に笑いながら見事に成長しているキュウリのツルの間に見え隠れして見える。
これは奥さんが一人で作っていることや、良かったら持って帰ってくださいとかの話をしながらこちらへ近づいてきた。
俺の目の前でいい感じに成長したレタスを収穫する、胸元から少し見える熟した谷間が汗ばんでいるのがわかる。
それにしても、この人は笑っていても、どこか淋しげに見える時がある。
それが気のせいなのかどうなのかはわからないけれど。
俺は言葉に甘えてキュウリやピーマン、トマトなどを貰って帰ることにし。
俺が採っている時に母屋の方へ帰って行く背中がやっぱり淋しそうに見えた。
その夜は採りたての野菜と猟をしていると言う父親が冷凍していた猪肉で豪勢な鍋を堪能した。
これからは家族ぐるみで付き合いましょうと言って、次はうちに招待する約束をしてその日は帰った。
帰り道、志津子もあの母親に同じ感想をもったらしい、それが生活から来ているのか持って生まれたものなのかはわからなかったが。
それから何回かサトシの家族と行ったり来たりが有ったが、なかなか志津子と二人きりになることもできず、
帰る時になると一人サトシだけがむくれ気味で帰って行くのを俺と志津子は笑いながら見送ったり見送られたりしていた。
二ヶ月くらい経ったとき俺は用事で隣町の役場へ行った。
「こんにちわ」
用事も済んで玄関を出たら、後ろから声をかけられた、
振り向くとサトシの母親だった。
「久しぶりですね、今日は何かの用事ですか?」
俺は笑いながら言葉を返した。
「こんなとこで何だから時間があればお茶でもどうです?」
俺がそう言うと、あの淋しそうな笑顔でうなずいた。
近くのファミリーレストランへ行って席につく。
「こんなとこ知ってる人に見られたら変な噂たてられませんか?大丈夫?」
俺は半分本気で心配してそう言った。
「割と大きい街だからそんなに知り合いに逢うなんてないし、もし逢ってもうちの人も知ってる人だから大丈夫」
「久しぶりだな」そうつぶやくと、めずらしく明るい顔で笑った。
「そんな顔で笑うときがあるんですね、奥さんも」
俺は素直にそう言ってしまった。
「前から思っていたんだけど、その奥さんはやめてもらえません」
サトシの母親はそういうと笑った。
「へっ?じゃぁなんて呼びましょうか。俺のことはこれからは、しゅうと呼んで下さい」
すると…あっ!この人もこんな顔するんだと思うくらいに、はにかんだ顔で応えた。
「じゃぁ、しゅうちゃんと呼ぶわね、あたしのこと孝子…」
「みんな、たかちゃんと呼んでるから、しゅうちゃんもしーちゃんも、たかちゃんとでも呼んでくださいな」
そう言うと、めちゃ恥ずかしそうに顔を伏せた、それからはお互いに何故かすごい親近感が出て、これまでと違って打ち解けて話ができた。
たまにふと遠くを見る様に窓の外に視線を送るところとか、男心にぐっとくるものがある。
年の頃なら40半ば熟れきった女の色気と色香がある。
「帰らなくちゃ、、、」遠い目をしてふともらす。
二人少し離れて駐車場へ向かう、車は?そうふりむくと、隅の方を指差した。
俺は何故か自然とそっちの方へ一緒に歩いて行った、別にその時は下心とかそんなのじゃなくて、ただ自然に。
孝子も変に思うこともなくついてくる、孝子のワンボックスの車の影に行き、手を引き寄せると俺は抱きしめた。
孝子も抗うことも無く身を任せている‥シャンプーの香りだろうかほのかに香る。
あごを引き寄せると孝子は目を閉じてつぶやく、
「こんなおばちゃんでもいいの?…」
俺は返事もせず唇を重ねた、熟した身体が震えている。
背中から腰へ手を這わせると思ったより肉感がある。
ワンピースの胸から股間の方へ手を滑らせるとくぐもった声が漏れ出る。
唇を離した俺は孝子を見ると、恥ずかしそうにうつむいてつぶやいた。
「こんなこと初めてだから、、ほんとだから、信じてね」
孝子は自分に言い聞かせる様に言った。
「帰らなくちゃ…」
再び軽くkissをすると身体を離した、車に乗り込んだ孝子が何かメモ書きして俺に渡した。
孝子の携帯のアドレスが書いてあった「後で必ず送るから」俺はそう言うと孝子の車を見送った。
続く