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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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ガルチック・コユナ社-1

「それはお別れのときが来たからです」

 ミア老婦人が私の目の前に腰掛けていた……目に涙を浮かべて。私もいつの間にか椅子に座らせられていた。

「ガルチック・コユナ社があなたの正体を調べています。
 
 ゲーマー登録を調べてもわからないように、私が細工しておいたので、あなたが何者なのかわからないのです。
 ですが彼らも必死になってあなたのデーターを解析しています。
あと6時間もすれば暗号が解けてあなたの構造が解析されるでしょう。
 あなたが冷凍冬眠者のハヤテだということは6時間後にはわかってしまうのです。
 
 そしてマチモリの人格再生プログラムともう一つ未知の電子生物と合体していることもわかるでしょう。

 カリアのプログラムはコピー防止機能と、解析しようとするとプログラムが壊れる機能があるので、正体が暴かれることはありません。

 でも、あなたがマチモリと関わっていることが分かれば、あなたは抹殺されます。

 マチモリを有害な人外生物だと言って殺処分した秘密結社が政府の要人にもガルチック・コユナ社の重役にも入り込んでいるからです。

 私は電子生物ですから電脳空間のどこかに潜んで生きられますが、あなたは生身の人間ですので、あなたの中にいるマチモリを破壊しそれをシンクロさせて向こうが把握しているマチモリの痕跡を消さなければなりません。 

 あなたはごく普通の冷凍冬眠者に戻るのです。

 アシュラのようなアバターは会社側のシステム異常でたまたま生まれたということになって、あなたはそれ以上追及されません。
 
 でも、あなたは一応調べられます。そのときにDマシーンも調べられるでしょう。
 だからDマシーンから私とマチモリに関する痕跡を消します。
それとマチモリのメモリチップは処分して下さい。
私はコピーを取って一緒に連れて行きます。

あなたはきっと監視されるでしょうから、私達はもう会うことはできないと思います。」

 私は全てを理解した。
そして自分の人生を考えて見た。
私はミアの提案したのとは別の可能性も考えてみた。
そしてそれが可能だということがわかったのだ。

「ミア……私の話を聞いてくれるかい?
カリアのコピーを置いて行くから彼女を私にくれないかな?
それと、私のコピーを作って一緒に持って行ってくれ」

 ミアは私の考えをスーパーコンピューターのような速度で推測していた。
そして、彼女はこう言った。

「考えられることは、あなたがアシュラとしてリアル・ゲームの空間で大暴れすること。でも彼らが、ゲーマーのハヤテを突き止めればあなたはそれで終わり。
あなたはそんなことはしない。だとすると残された道は引き返すことのできない方法。
しかも命の危険を伴う自殺行為……あなたはどうしてそこまで戦おうとするのですか?」

 私はそれに対して肯定も否定もしなかった。
私にはミア老婦人と同じ電脳技術の知識がある。
それはアルバ博士の持っている世界最高の技術と同等なのだ。

 私とマチモリとカリアのコピーをとってもらった後、それらにシンクロ防止の処置をしてもらった。
その後で私はミアの館が目の前で崩壊して消えて行くのを眺めていた。

 彼らは私とマチモリとカリアを連れて仮想空間の遥か彼方へ去って行く。
現実の世界では何処にも存在しない果ての果ての世界へ。
そこで楽しい愛に満ちた生活を過ごせば良い。

 私のコピーは電子生物としてミアとの愛を育むことだろう。
だがオリジナルの私はそれらを守るために引き返せない道を選ぶことにしたのだ。
そして……私は……。 


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