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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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アバター-2

「うーん、分からないことが多いが、今一度に理解しようとは思わない。
つまりリアル・ゲームの世界に行くことはできないということだな?
リアル・ゲームの世界は龍の谷の世界ということか?」

ピッギーは後ろ足で立って前足を手のように身振りをつけて言った。

「リアル・ゲームの世界は全世界的な広い世界です。
龍の谷はその一部で初心者のゲーマーが利用するゲーム空間の一つです。
極めて一部ではありますが、それでもDゲームの全域と重なり合う十分な広さがあります。」

「わかった。まずDゲームの世界に入ってみよう」

「かしこまりました。ハヤテさま」

目の前にゲーム・メニューが出た。
Dゲームの表示が出てドリーム・プログラムとストーリー・プログラムの表示が出る。ピッギーの声が聞こえる。

「Dゲームには2つの分野があります。
ドリーム・ゲームは分野と要素を入力して夢世界を作るやり方。
ストーリー・ゲームは予め用意された数百万の文庫から選んで体感するやり方。
どちらを選びますか?」

「ドリームで頼む。
ストーリーと言っても、あまり本を読んだことがないもんだからな。」

「では、分野を言って下さい。どんな夢の世界が良いですか?」

「やはり戦いたい。
戦って最後はチャンピオンになれるような格闘技の世界が良い」

「戦いの末、勝ち取る物はなんですか?
 絶世の美女。お金。家族の愛。世間の賞賛。名誉ある地位。高価な品物。
どれにします?全部でも構いませんよ」

「とりあえず家族の愛にしよう」

「では、参りましょう」

 私はこうやって戦いのドリーム・ゲームに没頭した。
終わった後は実際の体も筋肉疲労が残っていた。
ドリームの中では私は別人になっていた。
そしてその別人のことをアバターというのだと、私は理解した。

 ただ、ゲーム中に不思議な現象が起きた。
ときどき蜃気楼のような風景が現れるのだ。
しかも地平線の向こうではなく、身近な周囲の景色に重なるように起きるのだ。
このことについて、ナビゲーターのピッギーに聞いてみた。

「一種のうなり現象だと思います。
周波数の近い音叉を2つ並べて音を鳴らすと、お互いの振動数が影響を与え合ってうなり現象が起きます。
Dゲーム空間とリアル・ゲーム空間の間にも同じ現象が起きているのではないでしょうか?」

「なるほど、ではそのことを利用して向こうの世界に行くことはできないものかな?
もともとリアル・ゲームをしていることになっているのだし」

「ハヤテさまの現在のアバターのままでは不安定ですので、リアル・ゲーム側のアバターと合体する必要があります。
けれどもそれには色々な問題が生じます。
今は不可能なことではないとだけ言っておきましょう」

 この話はそれだけで終わった。しかしこの後、このことが再燃することになる。 


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