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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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アバター-3

 アニョンはクリーム色のワンピースを着て,髪をツイン・テールにしていた。
彼女は、きょうは色々な人間の間を歩き回っていた。
ハヤテは近くにいた老人と話していた。
恐らくもう時間が無くなるだろうという頃にアニョンはハヤテのところにやって来た。
アニョンはくるりと回ってワンピースのスカートを広げて見せた。
ついでにツイン・テールも一緒に回転した。

「ハヤテ。どうこの服、似合うでしょ? ずっと仕舞っておいたのを着てみたの」

「なかなか似合うよ。可愛いじゃないか、アニョン」

 アニョンは眉尻を下げ、法令線を深くして笑った。

「でしょ? 実はこれは作戦なの?
違うイメージの私を出して、前の私の記憶を消して廻っているのよ」

「何の為に?」

「実は昨日龍の谷で龍に食われてしまったの。
それでアバターを解除するとき一瞬ゲーマーの私の正体を周囲の人たちに見られてしまったから。
もしそのときの人がこのコロニーにいたら困るでしょ?
あっ、あれはきっとアニョンだってわかっちゃうじゃない。」

 私はアニョンの言っていることが幼稚な感じがして、思わず顔を綻ばせたと思う。
服装と髪形を変えたくらいでアニョンがアニョンでなくなる訳がないからだ。

 「聞いて良いかな?」

「何を?」

「アニョンのアバターが食われると、もうアバターは無くなるのかい?」

「なくならないよ。ゲーマーの私が生きているから。
ただアバターの生命点がゼロになっちゃうから、お小遣いを払って生命点を買わなければ駄目なんだ。
そうすれば前のアバターでまた活躍できるの」

「もし龍に食われるとき、アバターを解除しなければどうなるんだい?」

この私の質問にアニョンはブルルと身震いをさせた。

「多分、ゲーマーの私も死ぬことになる。
でも噛まれた瞬間に痛みで反射的に解除するから……そうだねセミの抜け殻からセミが飛び出すみたいに抜け出て逃げるの。
そのときゲーマーの姿を見られてしまうってこと。
すぐゲーム空間から撤退するんだけれどね」

「ところで、この間の続きだけれど、私はDマシーンでは龍の谷に行けないないことがわかったよ」

 アニョンは眉間に皺を寄せ、鼻の下に人差し指を当てて左右に動かした。

「じゃあ、オープンじゃなくて閉鎖された空間のゲームなんだ」

 彼女はそう言った後、顔をぱっと明るくした。

「それじゃあ、ハヤテには警戒しなくて良いんだね。
私のアバターがばれるんじゃないかとか。
やっぱりハヤテに話しかけておいて良かったなあ。
これからも宜しくね。では時間だから、さようなら。またね」

コミニュケーション・タイムでアニョンと話をするのは、これで2回目だ。
2回とも向こうから話しかけて来た。
もともと冷凍冬眠者で生き残っているのはハヤテくらいだし、120年もブランクが開いていれば、どんな年寄りとも話が合わない。
仕方なしに挨拶だけしてカウントにしていたのだが、前回アニョンに話しかけられて初めて会話らしい会話をしたのだ。


 ロータス・ハウスのこの一角をコロニーというが、百人前後が顔を出すが毎回同じではないし、一度も顔を出さずに引きこもっている者も相当数いるらしい。
行政はそういう者をチェックして、ひどい場合は集団生活訓練所に送るという。
 


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