運がない男-3
バイトが終わり、深夜の住宅街を一人歩いていると、突然僕の歩いている道の街灯が一気に消えた。
僕は驚き、足を止めた。
人通りのない道だ、僕はジワジワと、恐怖を感じた。
パッと僕の前に明かりが差した。
僕は動揺し、二、三歩後ずさりすると、光りの中からまばゆい美しさの虹のカーテンが舞い降り、そこから白い羽に包まれた少女が降り立った。
「な……何?」
僕はただただその少女を見詰めた。
虹のカーテンが消え、まばゆい光りも消えると、街灯が一斉に点いた。
劇的なその瞬間、僕は口を開けていた。
目の前に居る少女はさっきまであった白い羽は無く、白いワンピースに素足で僕にニッコリと微笑んでいる。
彼女……、いや美しい。
僕は少女の頭の先から爪の先まで見回した。
透き通る様な白い肌に、大きく愛らしい瞳、整った顔立ちだがまだあどけない幼さがある。
体は細いがそれと言って肉付きがないわけではない。
そして、腰まで流れた黒い髪が清純さを感じ男心をそそる。
少女は僕にニッコリ笑いながら言った。
「神崎 琢也 さんですね」
「はぁ」
「私、天使のロゼッタ・マグリールです」
「じょ……」
冗談でしょっと、言ようとしたが、登場が登場であるから、冗談ではないなと、言葉が詰まる。
ロゼッタは横髪をかきあげる仕種をしながら僕に近づき、手の届く所までくると、頷きながら言った。
「確かに神崎さんですね、オーラが最悪です」
「オーラ?」
「はい、不のオーラが貴方を包んでます、これはもう酷いです」
「はぁ……」
まぁ、今までの人生、運がなかったから、不のオーラに包まれていても可笑しくないけど、
「それでですね」
彼女は本題に入ったらしく、少し声を上げて僕に言った。
「天使の私が貴方に会いに来たのは、神様の命令でして……」
ロゼッタは言いづらそうに続けた。
「近い将来神崎さんは犯罪者になります」
「えっ、犯罪者?」
「はい、人生に絶望した神崎さんは無差別殺人を犯してしまいます。
それは酷い事件で、神様が胸を痛めて私を使わせたのです」
「つまり、僕を犯罪者にしないために僕を止めに来たと?」
「はい、本来なら神様は止めないのですが、ここ最近酷い事件がありすぎて、悪魔が勢力を上げているので、神崎さんは止めなくてはと……」
何だそれ、つまり悪魔の勢力を止める為僕を犯罪者にさせないってことか?
なんて身勝手な神様だ、僕の不運に心を痛めたんじゃないのかよ、神様ってのは僕のことなんか何ら考えてないんだな、何か神さんがそうだと分かると、世界ってクソだなって思えてきた。
「あの〜、なんか顔色が悪いように見えますが」
「いや、神様が身勝手なんだなって思って」
「あぁー、はい、身勝手です」
何だこの天使、認めちゃったよ。
「天使がそういうの認めちゃっていいの?」
「事実ですから、私達天使は嘘はつけませんので」
以外に天使も不便なもんなんだな、
「で、僕を犯罪者にしない為に来たんだよね、具体的に何するの」
僕の質問にロゼッタは満面の笑みで言った。
「神崎さんを幸せにします」
ニッコリと笑う彼女の笑みは暗い街灯でも輝いて見えた。