デート-2
学校が終わり、教室の外では堀田が佳奈を待っていた。そして、二人はそのままデートへと向かった。
デートと言っても田舎だ、ボーリングセンターや映画館があるわけじゃない、デートで行くとするなら学校に近い小さな商店街くらいだ、二人はその商店街の駄菓子屋でソフトクリームを買い、商店街わきの道を二人で歩いた。
「ねぇ、今日は買い物でもしようか、二人一緒のネックレスでも買おうよ」
人気の少ないわき道からでも商店街からおニャン子クラブの曲、じゃあね、が虚しく聞えていた。
「…………」
「どうしたんだよ、黙り込んじゃって」
「その………話したいことがあるの」
「何、話って」
「その、その………」
言いづらそうに佳奈はもじもじする。
堀田はその佳奈の素振りで、少し頭を過ぎらせた。二人の発展が余りにも遅いからもう少し積極的に行こうよとか、キスしてとか、はたまた今日はずっといようとか、様々な佳奈の言葉の憶測が過ぎる。堀田の頭の中には彼女との接近しかなかった。
「別れて欲しいの……」
「え、何だって、今なんて言った」
堀田には理解できない言葉が飛び込んできた。“別れて欲しい”今まで何も無かった二人が積極的に向き合うとか、もっと一緒にいようとかではなく、別れて欲しい、その意味不明な言葉は堀田の脳裏をぐちゃぐちゃに乱す。そして、今まで抱え込んできた苛立ちがここに来て倍増する。
「ごめん、堀田君、別れて欲しいの……」
小さな声は残酷な言葉として堀田の鼓膜に刺激される。
「なんでだよ、なんで別れるんだよ、俺らまだ何もしていないじゃないか、何も知らないし、お互いにまだ良いところも悪いところも分かってないじゃないか、それで別れるって」
堀田の言訳じみた言葉が、佳奈には痛く感じる。
「ごめんなさい、私、好きな人がいるの」
「好きな人、まさか、剣道部の」
佳奈は小さく頷いた。
「お前ら幼馴染だろ、それに佐々木はお前の事、なんとも思ってないじゃないか」
堀田はジュンと佳奈のことなど知らない、知らないが今はそう言わざるをえない、知ったように言わなくては堀田自身、余りにも惨めに感じた。
「分かってる。ジュンちゃんは私のこと、好きじゃないって、でも、私は好きなんだもん、堀田君には悪いと思ってる、でも、堀田君と付き合って、私やっぱりジュンちゃんが好きってはっきりして、どうしようもなくて………」
堀田には勝手な言訳にしか聞えない、そして堀田の何かが切れた。
「……くっそ、俺の気持ちなんか分かんないくせに、悪いと思ってる?冗談じゃない、悪いならそんな話しすんじゃねーよ!」
堀田は右手に持っていたソフトクリームを佳奈に投げ付けた。
「きゃっ!」
ソフトクリームは佳奈の胸に直撃し、べっとりと、制服を滲ませていた。
「来い!」
堀田は佳奈の手を強引に握り、引っ張る。そして、人気の無い空き地に連れ込み、佳奈を地面に倒した。