ジュン-1
体育館倉庫を抜け、体育館の少し離れた水道置き場の所まで来ると、私は足が震え、そこでしゃがみ込み、ジワジワと私の目から涙が溢れ始めた。余り泣いたこと無いけど、こんな酷いことあると、やっぱり涙は止められない、痛いよ、痛いよ、酷いよ………
「う、ううう、ひぃく……ひぃく」
私の泣き声じゃない、誰かが泣いている。私は涙顔で周りを見渡した。
泣き声は格技館の隅っこで男子が体育座りをし、泣いている声であった。
私のいる所から五メートルぐらい離れているが、木々で私には気付いていない様子だ。
私は、自分より大きな声で泣いている彼に、何故か吸い込まれるように興味が湧いた。同胞のように見えたのか、ただ可愛く見えたのか、分からない、でも、私より泣いていた。
恥なんて全く本人は感じていないのだと、こっちが感じるぐらいだ。私の涙が彼に吸い取られたようにも感じた。彼をよく見ると、彼は剣道部の佐々木 純だと分かった。
佐々木 純、彼は一年の剣道部員だ。それも前回の大会で準優勝をした新人エース、学校でかなりの有名人な彼が、ああも泣いているってことは、何か重大な事件でもあったのかしら、
私は自分の今の状況を忘れ、彼に見入ってしまっていた。
と、そこへ女の子が彼に近寄り、声を掛けてきた。
「ジュンちゃん、また泣いているの」
「うるさいな、そっとしといてよ」
ジュンちゃん?親しい女の子なんだ、可愛い娘だな、彼女かな。
「ジュンちゃん、いつも強がって、そこでこそこそ泣いて、そんなんじゃジュンちゃんもたないよ」
「……っひ……っひ…僕は強がってないよ、ただ皆、誤解するんだ。剣道が強いって、先輩も先生も、皆僕が剣道が出来るって、誤解して、でも、僕はそんなに強くない、団体戦なんか出たくないよ」
「だからか、泣いてるのは、次の県大会予選に団体戦のメンバーになったんだ」
「……うん」
「それで、団体戦で外れた先輩の風当たりが激しくなって」
「……うん」
「じゃ、頑張って団体戦で勝たなきゃね、そしたら先輩の風当たりも良くなるよ」
「僕はそんなに強くないよ、普通の実力だよ、それを……」