体育館倉庫-6
これじゃ、私が脚立に乗らないと作業が進まない状況じゃない。滑川とここでグズグズと作業はしたくはないし………はぁ、乗らなきゃダメか。
「分かりました、しっかり押さえてて下さいね」
滑川は、私の言葉にホッとした表情をし、脚立を立て始めた。
これに乗るんだよね……脚立は錆びていて、台自体がぐらついていた。滑川は脚立の両端を押さえると私に頷いた。
嫌だ、やっぱり無しって事にならないかな……
滑川が私をじっと見詰め、再度頷き言う。
「大丈夫、私が抑えるから」
「はい……」
滑川に聞えないほどの小さな返事をし、私は嫌々脚立に足をおく。ぐらりと揺れる脚立、言訳で高い所がダメと言ったが、この脚立は本当に怖い、錆びた脚立の柱を掴むと、手がジャリっと、サビと泥が手に染みる。ガクガクに揺れる脚立に私は恐怖心を抱きながら、ようやく戸棚に手が伸びた。戸棚にはダンボールが五、六箱あり、その二箱が赤いテープが張られていた。
「先生、赤テープのダンボールを下ろしたいんですけど、ダンボールをもって脚立から降りるのが怖いので、ダンボールをそのまま落として良いですか?」
「ああ、いいよ」
滑川の返事に私はダンボールを落とす位置を確認する為、脚立から下を見下ろすと、滑川が私を見上げていた。