THANK YOU!!-3
「鈴乃、放送委員なんだね!」
授業の終わりの挨拶もそこそこに、拓斗の席まで来た瑞稀はいきなり聞いた。
拓斗は、少し驚いたが、瑞稀が自分の席に来てくれた事を嬉しく思ったのか、笑顔になった。
「あぁ。ちょっと、前から興味あったんだ。」
「そうなんだ!びっくりしたよ!」
そう大袈裟にリアクションをしてみると、拓斗は拗ねたのか顔を逸らしてしまった。
「・・・そんなに意外か?」
「ん?意外だし、新鮮だね。」
隠すこともせず、はっきり言う瑞稀。
その言葉に少し傷ついた拓斗は顔を歪めた。
隣に座っていた菜美もピクっと反応した。
だが、瑞稀は続けた。
「でもさ、拓斗が放送してるの、見るの興味ある!てか、凄い楽しみだよ!」
屈託の無い笑顔で言った瑞稀。
多分、てか、絶対拓斗が傷ついていることに気づいていない。
でも、そんな拓斗の刺を、抜いた言葉だった。
(注:瑞稀が思いっ切り突き刺した刺です。)
「・・そっか。・・楽しみ、か。」
「うん!」
小さく瑞稀の言葉を呟いた拓斗は小さく笑った。
「じゃあ、楽しみにしてろよ。期待、応えられるように頑張るから」
「本当!?分かった!楽しみにしてるね!」
拓斗の言葉に、嬉しくなった瑞稀は笑顔で頷いた。
すると、後ろから顔をのぞかせた秋乃が意地悪な笑顔で言った。
「意気込むのはイイけど、噛まないように。」
「・・おい、柊?」
「ん?何?」
「お前なぁ・・。」
犬猿な空気になりそうな所を瑞稀が慌てて宥める。
どうやら、秋乃は毒舌なようです。
そこで、2時限目のチャイムが鳴り、教師が入ってくる。
瑞稀と秋乃は急いで自分たちの席へ戻った。
そんな二人を見ながら、菜美は不満を募らせていた。
「(・・なんなの?拓斗君が、傷つくようなこと言っといて謝りもしないなんて)」
そう心で呟いた瞬間に、自分の心にあった黒い感情がふつふつと湧き上がってきた。
「(・・大体・・最近瑞稀ちゃんって調子乗ってる気がする。)」
委員会のことも然りだが、何より拓斗に遠慮ない言葉が菜美の気に障っていた。
5年の最初はそこまでひどく思わなかった。
だが、運動会が終わってから、何故か凄く仲良くなった。
そして、瑞稀は拓斗に気を許してきたのかあまり、言葉選びに躊躇しなくなっていた。